1994 Fiscal Year Annual Research Report
Dimethyl Sulfoxideの全身投与によるラット水晶体の変化
Project/Area Number |
06771554
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
生駒 尚秀 金沢医科大学, 医学部, 助手 (50257474)
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Keywords | 水晶体 / 白内障 / DMSO |
Research Abstract |
Dimethyl Sulfoxide(DMSO)は,米国において民間治療薬として,局所または全身投与を受けている患者がいる。しかし,実験レベルではDMSOが白内障を誘発したとの報告もあるため,各種動物(家兎,ラット)に長期間投与し,生体眼での水晶体の形態変化,摘出眼での生化学的変化を検討し,皮質混濁の発現,混濁部位での還元型グルタチオン/酸化型グルタチオン比の低下,水可溶性蛋白質の減少と水不溶性蛋白質の増加をこれまでに確認している。一方、米国でDMSOを長期連用している患者の3年間の水晶体変化を著者の施設で行い特徴的な皮質深層部の散乱光増強と核部の変化所見をえている。本実験は,生体眼における混濁発現の初期像ともいえる水晶体皮質深部の散乱光強度の増加の原因を探ることを目的とし,顕微鏡下にこの部位の形態的変化を観察した。実験にはBrown-Norwayラット40匹を供試動物とし,1%および5%濃度にDMSOを溶解した飲料水を自由摂取させて白内障を誘発した。また常水を投与したものを対照群とした。水晶体の観察記録は2週間毎にScheimpflugカメラ(EAS-1000,NIDEK)で行い,水晶体皮質部の散乱光強度をdensitometryにより測定した。さらに,水晶体皮質部に混濁が出現した時点で水晶体を摘出,走査型電子顕微鏡下で観察,撮影し,一部の試料にはX線解析を施行した。水晶体の変化は,5%投与群で投与開始3か月以降から,前後皮質部の散乱光が増強しはじめ,6か月めで核部を囲む前後皮質深層部に帯状,球状混濁として認められた。1%投与群は基本的に5%投与群と同様の経過を示したが,進行速度,程度に差が見られた。電子顕微鏡下では,散乱光の増強が見られた深部皮質の繊維間に無数の顆粒状物質が認められ,この物質は直径約2μmの結晶様の形状を呈していた。この結晶様物質をX線解析した結果,高濃度のS元素が検出された。DMSO投与による水晶体初期変化はDMSOの直接水晶体内浸透によりS元素を含む結晶物質が水晶体繊維間に析出,繊維結合に乱れをきたし発現すると想定した。
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