1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト歯根膜細胞におけるBiglycan(PG 1)の果たす役割について
Project/Area Number |
06772044
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
小野崎 純 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (10257298)
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Keywords | 歯根膜細胞 / TGF-β1 / biglycan / decorin |
Research Abstract |
本研究は、歯根膜組織の代謝機構の一端を解明するために、ヒト歯根膜細胞を用いて、proteoglycanと、TGF-β1をはじめとするサイトカインとの関連性を検討した。 方法は、歯根膜細胞にTGF-β1添加し、PGl/biglycan、PGll/decorinの産生に及ぼす影響、ならびにこれらproteoglycanとサイトカインとの関連性について、sulfer-35で標識したproteoglycanを免疫沈降法を用いて検討した。TGF-β1はEGFの存在下で軟寒天培地中のNRK細胞を形質転換させることが報告されているため、今回はEGFに注目してbiglycanとの関連性を検討した。その結果、 (1)TGF-β1はヒト歯根膜細胞の細胞外基質蛋白の合成を顕著に促進した。 (2)ヒト歯根膜細胞において、TGF-β1はbiglycanの合成を顕著に促進した。 (3)ヒト歯根膜細胞においても、decorinとTGF-β1は結合することが確かめられた。 (4)TGF-β1は、ヒト歯根膜細胞のdecorinの分子量を濃度依存的に増大させた。 (5)ヒト歯根膜細胞において、biglycanはEGFとは結合しなかった。 (6)ヒト歯根膜細胞において、decorinとEGFとが結合している可能性がある。 以上のことより、ヒト歯根膜細胞において、細胞外基質蛋白質であるproteoglycanと、TGF-β1をはじめとするサイトカインが相互に密接な関連性を保ちつつ、歯根膜の機能発現に、大きな役割を果たしていることが示唆された。 最近になって、牛動脈平滑筋細胞ではbiglycan、decorinの両方の産生が見られるが、牛動脈内皮細胞ではbiglycanしか産生されていないことが報告されている。このようにbiglycan、decorinは組織の外力に対する抵抗性に深く関わっているものと思われるが、biglycanの役割については未だ明らかになっていない。今後の展開としては強大な咬合圧を緩衝している歯根膜でのbiglycanの役割について更に検討していきたい。
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