1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06801044
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Research Institution | Kobe Tokiwa Junior College |
Principal Investigator |
大野 仁 神戸常盤短期大学, 教養科, 助教授 (50223912)
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Keywords | 判 / 選挙制度 / 龍筋鳳髓判 |
Research Abstract |
当研究の目的は、現存する唐代判文試料を集成し、基本テキストを作成することと、唐代選挙制度における判文試験の実態・意義などを考察することにある。 まず、判文試料の収集については、『龍筋鳳髓判』の逸文を宋代以降の類書から蒐集した。類書の性格から引用されるのは数語程度に過ぎないが、これまで言及されていない判を7条見出すことができた。とくに重要と思われるのは、県丞門に属する判の存在である。これは宋・陳振孫『直斎書録解題』には全体の編目構成を「省台寺監の百司より下は州県に及ぶ」とするにもかかわらず、現存するのは中央官庁に関係するものに限られていたため、佚亡を推測されていたが、それを証明付けるものとなる。今後、未見の類書を調査したうえで、全体の編目達成を改めて検討したい。また、敦煌・吐魯番文献の判文収集は、現実行用の判も含めたものを想定しており今年度内においては完了できなかった。 次に、基本テキストの作成については、『文苑英華』(通行本と明抄本)と『全唐文』との対校を完了した。 最後に、判文と唐代選挙制度との関係を考察するため、『文苑英華』所収の判で、同一問題に対し複数の答案を収めているものを抽出した。問題数は174、作者は記載のないものを含めて延べ595名に上った。これらの作成の時期は、作者に関する関係資料の不足から明確に決定できるものは少なかった。ただ、この作業の過程で、『文苑英華』所収の判が必ずしも書判抜萃科のものに限定されるものではないことが明らかになった。すなわち書判抜萃科の試験と同時に通常の吏部銓選の試験が同じ問題で行なわれていたのである。後者は「平判」とよんでいるが、清・徐松『登科記考』ではこの両者は区別されていない。
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