1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06803002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 元 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (10229833)
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Keywords | 企業グループ / 総合商社 / Coalition / 部分参入 / 全面参入 / コア均衡 / ナッシュ均衡 / 折衷ゲーム |
Research Abstract |
総合商社の市場環境と業務範囲に関する文献や資料を整理することは、stylized factsを抽出するのに有意義であった。しかし、市場環境を要約する需要関数を計量的に導出したり、費用関数を実証的に定式化することは、価格と費用のデータ不足のために難題が山積することがわかった。Stylized factsの収集を通して、産業組織理論プロパ-への新しい2つの観点を見いだすことができた。(1)クライアント企業の「商社ばなれ」が起こっている。競合市場理論に基づいてこの現象を解釈すると、「商社ばなれ」は既存の商社に対抗する新規の「部分参入」が起こることと戦略的に同義であることがわかる。新規の総合商社としての「全面参入」が皆無であっても、「商社ばなれ」がある限り、競合市場の理論は総合商社産業の分析に有効であるといえる。「商社ばなれ」を「部分参入」と見なすことで、研究当初に予測された範囲より幅広く柔軟に、競合市場の理論を総合商社産業の分析に応用できることになった。(2)市場開拓や大規模プロジェクト運営の際、総合商社はグループ内企業の供給能力に依存しながらプロジェクト構成企業を組織するのが通例である。総合商社産業が寡占的な競合状態にあること自体は、総合商社を媒介として企業グループが競合していると想定することができる。企業グループをcoalition of firmsと定義すると、総合商社産業の構造は、各々のcoalition内部では総合商社を含めて協力ゲーム(コア均衡)を、そしてcoalition間では競合して非協力ゲーム(ナッシュ均衡)を展開するoverallな均衡状況として理解される。この協力ゲームと非協力ゲームの折衷として総合商社産業を解明するアイデアは複合ゲーム理論の新しい応用であると思われる。平成7年度の収穫は、(1)競合市場理論の拡大解釈と新たな応用、(2)総合商社産業の構造から想定される協力・非協力の折衷ゲームの応用、の2点である。
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