1995 Fiscal Year Annual Research Report
市場社会の人間学-ヒューム・ジンメル・ハイエクを超えて-
Project/Area Number |
06803004
|
Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
浦園 宜憲 拓殖大学, 政経学部, 教授 (80146977)
|
Keywords | ヒューム / ジンメル / ハイエク / 市場社会 / 人間学 / コンヴェンション / 信頼 / 自生的秩序 |
Research Abstract |
本年度は,「市場社会の人間学」の構築のため,1.ヒューム・ジンメルについての研究の継続,2.ハイエク体系の研究,3.哲学・思想,経済学,社会科学の再検討の三つの作業を行った。 1.については,とくにヒューム体系に集中し,「ヒュームのコンヴェンション」「価値尺度のモラルサイエンス」というタイトルで,二つの学会報告を行い,ヒュームの知性・情緒・徳性の立体的関連を整理し,さらに経済活動とコンヴェンションの相関を考察した。ただこれらの作業にヒュームの懐疑論をいかに組み込めるかについて今後の課題であり,また懐疑論を通してジンメルの生の哲学との関連が出てくると予想している。 2.については,ハイエクの正義のルールが,富の成長につながる規則功利主義的面が強い点を批判的に検討した。その結果,オ-クショットの会話的正義やムーンの対話的実践論に習い,正義のルールをコミュニケーションの接続と結び付けることがハイエク体系の脱構築に有効であることを確認した。 3.については,市場要素と非市場要素の複合体として市場社会を解明する方法に対して,経済人活動に限定して経済学を構成する方法の難点がどこにあるかを,ベッカーの家族の経済学,青木の比較制度分析等に内在して検討した。人間活動を目的・手段の関係に寸断すれば目的最大化,手段極小化による最適化が,結婚や技能形成にまで持ち込まれうる。この寸断の可否が,市場社会論か経済学かの岐路を定める。しかしこの点を取り除けておけば,進化ゲーム論,繰り返しゲーム論等は,ヒュームのコンヴェンションに対応したテーマを扱っている点で参照の価値があることを確認できた。なお1.2.3.についての,概観的イメージを確定するため,「市場経済と人間存在-市場社会のコミュニケーション化をめぐって-」と題する論文を執筆した。
|