1995 Fiscal Year Annual Research Report
“カモフラージュ"の解析による自然パターン認知メカニズムの研究
Project/Area Number |
06808037
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Research Institution | DOSHISHA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
板東 敏博 同志社大学, 工学部, 助教授 (50145463)
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Keywords | 視覚認知 / 自然パターン / テクスチャー / カモフラージュ / 隠蔽的擬態 |
Research Abstract |
生物が環境へ適応しながら進化してきたことを考えると、自然環境の中で棲息してきた動物は、自分達を取り巻く自然の中に存在する複雑なパターンに対して、視覚認知能力を発達させていると予想される。人間も進化の過程の大部分を自然環境の中で過ごしており、持って生まれた視覚認知能力の優れた部分が自然のパターンの持つ特徴に対応している可能性が高い。本研究では、周囲の海底のパターンに応じて体表のパターンを変化させて背景に溶け込んで巧みに自分の姿を隠すヒラメの隠蔽的擬態の解析をおこない、その中から自然のパターンの認知において大切な要素について考察した。 隠蔽的擬態は、動物などが背景の自然パターンを「地」としたときに、その体表パターンが「地」に溶け込むことで「図」として認知されることを回避する現象である。「地」に溶け込むには、体表パターンが「地」の特徴に近い特徴をもつ必要があるが、その「地」のパターンは素材的性質を持ち、テクスチャーで特徴づけられる。そのため体表パターンが「地」と類似したテクスチャーを持つと、バックグラウンドと一体化し境界が不明瞭となり、そのパターンは「図」として目立ちにくくなる。特に自然におけるバックグラウンドとなる土・砂・岩・植物の持つ一般的な特徴は、濃淡・色彩の分布の統計的性質、つまりテクスチャーによって特徴づけられる。このことは、体表パターンにおけるテクスチャーの再現が隠蔽的擬態成立の鍵であることを示唆することになる。 実際、画像解析の結果から、ヒラメの隠蔽的擬態では、体表パターンの平均的な明るさばかりではなく、テクスチャーの特徴を類似させていることが確かめられた。この結果は、我々人間を含む動物の視覚認知において、自然パターンを特徴づけるテクスチャーが大きな役割を果たしていることを示唆している。
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Research Products
(1 results)