2006 Fiscal Year Annual Research Report
フィンランド人日本語学習者による日本語語い音調の韻律研究
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06F05756
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広瀬 啓吉 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ISEI-JAAKKOLA Toshiko 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 韻律的特徴 / フィンランド語話者 / 日本語初習者 / アクセント型 / 基本周波数 / 時間長 / 言語普遍性 / 言語固有性 |
Research Abstract |
音韻構造や言語タイミングが日本語と近いフィンランド語の話者が、日本語を発音する際に、韻律をどのように生成するかを分析し、日本語母国語話者との違いを定量的に示してモデル化することを目的として、以下の成果を達成した。韻律の言語普遍性と固有性の解明に向けて、他言語の話者も含め研究を発展させている。 1.日本語上級者のフィンランド語話者が、3箇所のフォーカスを置いた平叙文を発話した場合のフォーカス語とイントネーションの基本周波数パターンを日本人の発話のそれと比較検討した。その結果、語フォーカスの実現はできるが、LH(H)パターンになると母語のHL(L)パターンの影響をまだ受けていることが分かった。また、日本語にあるようなフォーカスの位置によってフレーズを形成するようなタイプの文全体の変化に対しては十分習得していない、ということも明らかになった。この原因には、母語干渉や文韻律レベルでの教授を十分受けていないことが示唆された。さらに、語レベルでの基本周波数と音圧の関係は、日本語初習者と日本人母語話者に関しての先行研究で明らかになったのと同様に、フォーカスが置かれても、日本人の場合はHL型においては、平行せず逆行することが明らかになった。 2.日本語、フィンランド語、英語の話者による、感情を伴った英語の韻律文に対する認知を比較した。その結果、日本人は他の言語話者より視聴覚の差があまりないこと、否定的感情に弱点があることがわかった。また、日本人話者は英語話者と各感情に対する認知パターンは似ているが、フィンランド語話者は異なったパターンを示した。韻律と認知の関係性においては、英語話者ほどではないが、日本語話者は周波数よりも音圧に対して認知との相関が高いことが分かった。これは言語固有の韻律とどのような関係にあるのか、今後明らかにする必要がある。さらには、プロミネンスと感情生成の韻律には共通点があることも示唆された。
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Research Products
(5 results)