2006 Fiscal Year Annual Research Report
和紙の製紙化学的研究と古文書学的研究の総合-日韓の製紙法の相違を視点として
Project/Area Number |
06F06001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保立 道久 東京大学, 史料編纂所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HAN Y.-H. 東京大学, 史料編纂所, 外国人特別研究員
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Keywords | 大徳寺古文書 / 真珠庵古文書 / 和紙 / 抄紙技術 / 繊維配向性 / 画像処理 / 透過光写真 / 簀の目 |
Research Abstract |
繊維配向分析の応用として,韓紙と和紙に関する流し抄きの差異を明瞭にし、両者の漉き方の違いを明らかにした。和紙の1層目は、紙料の流れの中で配向した繊維は、脱水が速いためにそのまま配向した状態で固定される。一方、2層目は、脱水が遅くなるために流れの中で配向した繊維が固定されないで平均化してしまい、捨水面では繊維配向度が相対的に弱くなる。これを利用し、紙の表裏を判別する客観的な方法を確立した。 和紙の産地による差について、美濃の長谷川氏、愛媛県の菊地氏、福井県の岩野氏(人間国宝)の紙について調べた。画像処理による繊維配向性について調べた結果,美濃紙が他の産地の紙より繊維配向度がやや強いことが分かった。 繊維配向分析の手法を古文書の調査にも応用した。島津家文書の書状では、掛紙(封筒に相当)は本紙と90度配向方向が異なっていたが,掛紙は立てて(90。回転させて)使うという習慣を科学的に裏付けた。時代による変化は見られなかった。 大徳寺文書では,眞珠庵文書については厚さ,面積,色,刷毛面/板目面の識別などと目視に基づくデータベースを作成した。それと共に顕微鏡写真から画像処理を行って繊維配向性を分析した。繊維配向性の分析結果からみると13C〜17Cまで簀肌面と捨水面差が少なくなり、時代とともに抄紙技術が安定化することが分かった。 大徳寺文書料紙の簀の目数を測定した。透過光写真の画像を二次元フーリエ変換し,パワースペクトル図のスポット位置から1寸(30.3mm)あたりの簀の目数を計算する手法を用いた。大徳寺文書料紙309点の測定結果では,8〜25本/寸と分布が広く,平均値は16.4本/寸であった。書記年代との対応がわかる1168年から1669年の間の502年間の紙248点について歴史的な変遷を見ると,平均的には15本/寸程度から18本/寸程度へ増加していた。
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Research Products
(2 results)