2007 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代における植物資源の食糧及び生活資材としての継続的利用の考古植物学的研究
Project/Area Number |
06F06011
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 三男 Tohoku University, 学術資源研究公開センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Minkoo 東北大学, 学術資源研究公開センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 縄文時代 / 炭化材 / 考古学 / 樹種同定 |
Research Abstract |
青森県三内丸山遺跡の炭化材の樹種同定を行った。三内丸山遺跡は縄文時代の遺跡で、紀元前約4,000年から2,500年(縄文時代前期-中期)まで占有されていた。同定した炭化材は、発掘調査と概要報告の際には「第97号焼土遺構」と呼ばれた屋外炉において出土したものである。この屋外炉は第19・25・27・29次調査A区(グリッドVIII0-93)に位置し、同定した炭化材は炉の三つの層位(5、7、10層)から採取された。 同定した樹種はクリ(Castanea crenata)、ヤナギ(Salix spp.)、ニワトコ(Sambucus racemosa)、ノリウツギ(Hydrangea paniculata)、サンショウ(Zanthoxylum spp.)などの5種類であった。とくに、クリの破片は全ての層位で最も多く出土した。第97号焼土遺構は三内丸山遺跡の占有の末期のものであり、炭化材の分析結果は遺跡の放棄直前にどのような樹種が燐料として使われ左のかを示している。また、当時の遺跡周辺の植生を間接的に示しでいる。分析結果をみると、クリ以外の炭化材も少灘は存在するが、屋外炉の全ての層位で、クリの炭化材が優占している。このことは、遺跡の放棄直前まで、クリが遺跡周辺で多量に利用できたことを示唆している。さらに、遺跡の放棄時までクリ林が存在した可能性も考えられる。これまでの三内丸山遺跡における花粉分析と出土炭化材の研究からは、縄文時代前・中期には遺跡周辺にクリが密生していたこと、そしてクリが日常生活によく利用されていたことが示されており、本研究の成果はこれらの研究成果と一致する。
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