2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国江南水郷の環境民俗学的研究-民俗学の社会問題への応用
Project/Area Number |
06F06013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菅 豊 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN Zhiqin 東京大学, 東洋文化研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 水環境 / コモンズ / 地域アイデンティティー / 環境民俗学 / community based management / 地域資源 / 民俗学の応用 |
Research Abstract |
平成18年度は、研究分担者(外国人特別研究員・陳)が、研究代表者(受入研究者・菅)の指導のもと、本研究の研究目的に鑑み、フィールド・ワークを中心とする研究を行った。調査地は、陳が博士論文作成過程で基本的なデータを収集している中国漸江省紹興市東浦鎮青龍村、安昌鎮長楽村であり、現地調査は、平成18年4月26日〜5月8日、平成18年9月6日〜27日、平成18年12月18日〜平成19年1月5日の3回行われた。調査では、伝統的な水利用、管理のシステムとその変化、水環境保全に関する伝承、およびそれをめぐる環境観に関する民俗誌を作成するための基礎的データの収集を行った。さらに、調査終了後、本務地においてデータ整理、データ解析を行い、当該調査地域の基本的な民俗誌のスキームを作成している。この作業の結果、研究対象地域(中国江南地域)の水界をめぐる共的な社会システム(地域を基盤としたコモンズなど)がほとんど存在しないことが明確に確認され、その要因として中国社会に典型的な宗族等の血縁的集団が卓越する分、相対的にコミュニティーを基盤とした地縁的結合が弱いという興味深い論点を発見した。これは、今後、生活空間と密接な関係を持つ水環境の問題を解決するうえで、コミュニティーを基盤とした制度、規則、組織の構築の可能性、必要性を示唆するものであり、本研究の最終目標である応用的、実践的な提言に繋がるものと考えられる。 このような研究成果は、その研究の途次において随時公開、中間発表されている。具体的には、日本の関連学会(日本民俗学会第58回年会)で発表するとともに、国際会議(2007.3.18-23「国際会議・現代都市発展と文化伝承」:於中国・広州)などで発表した。
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