2006 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度解光電子分光による低次元化合物における電荷密度波・超伝導の研究
Project/Area Number |
06F06046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 隆 東北大学, 大学院理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAJ Satyabrata 東北大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 電荷密度波 / 超伝導 / 光電子分光 |
Research Abstract |
低次元化合物における電荷密度波・超伝導の起源を明らかにするために、高分解能光電子分光装置の改良を行った。特に、低温における精密測定を実現するために、開放型ヘリウムクライオスタットの改良を行った。改良した装置を用いて、ペロブスカイト型タングステン酸化物Na_xWOx_3の金属絶縁体転移前後における角度分解光電子分光を行い、組成xに依存した電子状態を精密に決定することに成功した。絶縁体領域の組成(x<0.25)では、バンドがフェルミ準位を横切らず、擬ギャップが開いていることを見出した。この擬ギャップの起源として、強い格子欠陥やWO_3格子のランダムな配置によるアンダーソン局在の可能性を示唆した。また、高結合エネルギー側において、ポーラロンの存在を示す異常なスペクトルの温度変化を観測した。金属領域(x>0.25)では、Γ(X)点を中心とした電子的フェルミ面を観測し、バンド計算で得たW 5d t_<2g>バンドの振る舞いと良い一致を示すことを見出した。さらに、金属領域で得られたフェルミ面のトポロジーが絶縁体領域で見られるフェルミ1面の名残構造に類似していることから、絶縁性の起源として、アンダーソン局在によるクーロンギヤップの生成を示唆した。また、K_xWO_3における電荷密度波転移の起源を明らかにする目的で、高分解能角度分解光電子分光を行った。その結果、価電子帯において明確なバンド分散を観測することに成功した。フェルミ準位近傍の電子状態を二次元的な波数空間にプロットした結果、得られたフェルミ面が複数の隠れた擬一次元的フェルミ面で構成され、各々のフェルミ面がネスティングを満たしやすい形状をしていることを見出した。さらに、その形状がバンド計算と非常に良い一致を示すことを明らかにした。以上の実験事実から、K_xWO_3における電荷密度波転移は、隠れた一次元的フェルミ面のネスティングによって説明されると結論した。
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Research Products
(2 results)