2007 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光による低次元化合物における電荷密度波・超伝導の研究
Project/Area Number |
06F06046
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 隆 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAJ Satyabrata 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 電荷密度波 / 超伝導 / 光電子分光 |
Research Abstract |
低次元化合物における電荷密度波・超伝導の起源を明らかにするために、高分解能光電子分光装置の改良を行った。改良した装置と高輝度放射光施設を用いて、T=60Kにおける輸送現象の異常が報告されているタングステン酸化物であるP_4W_<12>O_<44>の高分解能角度分解光電子分光を行った。フェルミ準位近傍において3本のバンド分散の観測に成功し、バンド計算との良い対応を得た。フェルミ面を実験的に決定し、一部の波数領域でネスティングの存在を見出した。T=20Kにおいてフェルミ準位上の強度の波数分布を測定した結果、ネスティングの存在を見出した。T=20Kにおいてフェルミ準位上の強度の波数分布を測定した結果、ネスティング条件の良い波数領域ではギャップ構造が存在する一方、ネスティング条件の悪い波数領域ではフェルミ準位上の強度が残っており、伝導に寄与することを見出した。この実験結果から、P_4W_<12>O_<44>の電荷密度波状態における金属的伝導の起源を明らかにした。また、超伝導と電荷密度波状態の存在が示唆されているK_<0.25>WO_3単結晶に対する高分解能ARPESを行った。実験的にバンド分散形状およびフェルミ面形状を決定し、VASPコードを用いたバンド計算結果との比較を行った結果、両者の間に良い対応を見出した。これにより、フェルミ面が複数の一次元的バンドにより形成されていることを明らかとした。一元的フェルミ面は互いにネストする形状を示し、そのネスティングベクトルQ=(1/2a^*-1/2b^*)が電子回折実験で報告されている散乱ベクトルの値と一致することを見出した。これらの実験結果から、K_<0.25>WO_3における一次元的バンド構造が電荷密度波不安定性を有しており、このことが高温の輸送特性に現れる異常と深く関係していると結論した。
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Research Products
(4 results)