2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
何 長振 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 量子スピン系 / 磁性 / 1次元磁性体 / 磁気相転移 |
Research Abstract |
(1)擬1次元磁性体SrCo_2V_2O_8における二つの磁気相転移の発見。 擬1次元磁性体SrCo_2V_2O_8の単結晶を育成し、磁化率、磁化、比熱の測定により、この物質はキャントスピン構造を持つ反強磁性体で、5Kと3Kで磁気相転移を示すことを見出した。このスピン構造は対称中心のない結晶構造に由来し、5Kでジャロシンスキー・守谷相互作用によるキャントスピン構造を持つ反強磁性転移を示し、3Kでは異なるキャント角を持った反強磁性転移を示す。このことは、同じ構造を持つが対称中心があるBaCo_2V_20_8の磁性との違いをよく説明する。両物質とも、磁場誘起磁気秩序-無秩序転移を示す。 (2)新擬1次元磁性体BaMn_2V_2O_8の発見。 スピン5/2の擬1次元磁性体BaMn_2V_2O_8を新たに合成し、その磁性を調べた結果、この物質は、35Kという関連物質では相対的に高い温度で、キャントスピン構造を持つ反強磁性転移を示す。一連の関連物質AM_2V_2O_8(A=Ba, M=Cu, Co, Mn)の性質について検討し、スピン量子数が大きくなるとスピン揺動が抑えられ、より高い温度で長距離磁気秩序を示すようになることを明らかにした。 (3)新物質PbCo_2V_2O_8の開発。 3元系PbO-CoO-V_2O_5の相図の研究から、新しい物質PbCo_2V_2O_8を見出し、その結晶構造は正方晶で、c軸方向に回転スピン鎖を持つ量子スピン系物質であることを明らかにした。磁化および比熱測定から、この物質がネール温度4Kのキャントスピン構造を持つ反強磁性体で、磁場下では、通常のスピンフロップ現象ではなく、磁場誘起磁気秩序-無秩序転移を示すことを見出した。この現象は、同構造を持つBaCo_2V_2O_8やSrCo_2V_2O_8においても観測されていて、一般式ACo_2V_2O_8を持つスピン3/2の擬1次元磁性体に共通の性質であることを明らかにした。
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