2006 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー延伸過程のオンライン測定による繊維構造形成機構の解明
Project/Area Number |
06F06091
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大越 豊 信州大学, 繊維学部, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姜 英娥 信州大学, 繊維学部, 外国人特別研究員
|
Keywords | 繊維構造形成 / 時間分解能 / PVDF / レーザー延伸 / ネッキング / 結晶系転移 |
Research Abstract |
走行中の繊維に炭酸ガスレーザーを照射して急速かつ均一に加熱することによって、ネック延伸点を非接触で空間中に固定できる。固定されたネック延伸点から任意の距離離れた点でのその場測定により、繊維構造形成過程を解析する。今年度は、SPring-8で行ったPETとPTTの時間分解能1ミリ秒以下でのその場測定による繊維構造形成機構の解明の研究に参加すしてオンライン測定のノーハウを学ぶと共に、ポリフッ化ビニリデン(Poly(vinylidene fluoride),以下PVDFと略す)の延伸挙動を解析した。 前者では、PETの繊維構造形成におよぼす分子量依存性、およびPETとPTTの繊維構造形成の違いについて研究を行った。この結果、PETでは分子量が大きいほど配向結晶化の開始時間が遅いこと、PTTではPETとは異なりネック変形直後から結晶性回折が観察されること等が明らかになった。 また後者では、クレハ合繊株式会社から頂いた直径250μmのPVDFモノフィラメントをレーザー加熱延伸する際の温度、直径、および張力を測定した。このデータは、今後行うオンラインX線回折測定の際の基礎データとして利用する。安定的に延伸できた条件は延伸倍率4.5と5.5であり、送出速度は6と12m/minであり、この時の延伸応力は110と242MPaであった。 PVDFのようなオレフィン系の高分子は未延伸状態でα晶が形成されており、ネック延伸過程でβ晶が形成される。すなわち、転移過程で初期のα晶が消滅されβ晶が形成されるかあるいはα晶からβ晶へのコンフォメーションの転移が起こるのかが観察できると思う。 またオンライン温度測定について、得られた赤外放射温度計の出力を繊維温度に換算するために温度キャリブレーションを行ったが、誤差が大きかった。この原因は、おそらくPVDFにはカルボニル基がないため、赤外放射温度計のフィルタ(カルボニル基の伸縮振動)と対応しなかったためだと考えており、今後、補正する予定である。
|