Research Abstract |
環境問題が地球規模で叫ばれる中,環境にやさしい材料創製技術の確立が求められている.ケナフ繊維を強化材,ポリ乳酸(PLA)をマトリックスとするグリーンコンポジットの開発もその一環であるものの,従来研究は射出成形材を対象としたものが多く,連続ケナフ繊維を対象にしたものは数少ない.そこで,ケナフ/PLA材を圧縮成形により作製し,その機械的特性,耐環境特性及び生分解性について調査した.得られた結果を以下に要約する. 1)ケナフ繊維の熱重量解析の結果,三段階の質量損失が見られ,熱的安定性は218℃以下であることを確認した. 2)単繊維引張試験の結果,結晶化度の増加に伴い熱処理を施した単繊維は処理温度140℃までは増加する.しかし,それ以降218℃に向かって徐々に熱分解が起こり低下することが確認された.また,アルカリ処理を施した単繊維は処理濃度15%で破断ひずみは69%向上し,大幅な延性改善効果が確認された. 3)フーリエ赤外分光測定試験の結果,アルカリ処理によるヘミセルロースの除去,及びリグニンの残留を確認した. 4)ケナフ/PLA材の引張破断試験の結果,一方向材及びクロスプライ材では,繊維含有率の増加に伴い強度の向上が確認できた.特に,繊維体積率55%のものはPLA単体引張特性の6倍以上の値を示した. 5)ケナフ/PLA材の衝撃特性は引張試験結果同様,一方向材及びクロスプライ材では,繊維含有率の増加に伴い強度の向上が確認できた.クロスプライ材は一方向材の強度と比較して2/3程度の値を示す. 6)ケナフ/PLA材の高温高湿試験の結果,ケナフ単繊維の重量増加率及び含水率は処理時間1日目において飽和することが確認された.また,引張特性に及ぼす高温高湿処理の影響は小さい. 7)ケナフ/PLA材の生分解性を海水下で調査した結果,繊維含有率の高いほどケナフ/PLA材の分解は激しく,引張強度の大幅な減少を確認した.
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