2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06185
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤吉 好則 京都大学, 大学院理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GERLE Christoph 京都大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | V-ATPase / Voサブユニット / 極低温電子顕微鏡 / 2次元結晶 / 膜蛋白質 / 電子線結晶学 |
Research Abstract |
イオンポンプであるV-ATPaseの結晶化を行い、その立体構造を解析する研究を進めているが、これは非常にチャレンジングな研究課題である。しかし、結晶化条件を論理的に考えて最適化することによってV-ATPaseの結晶化に成功した。この結晶は高分解能の構造解析には現時点では不十分な小さい結晶であるが、この2次元結晶化と投影構造の解析の成功によって、重要な新しい知見を得ることができた。 V-type ATPase(V-ATPase)は、F-ATPase, A-ATPaseなどと多くのATPaseファミリーを構成する重要なエネルギー変換機能を有する膜タンパク質で、電気化学的勾配を化学エネルギーに変換するタイプのATPaseである。P-type ATPaseの高分解能構造解析やF-ATPaseのF1部分の高分解能の構造解析は行われているが、V-ATPaseの高分解能の構造は解析されていない。上記エネルギー変換の分子機構の詳細を理解するためには、V-ATPaseの高分解能の構造解析が望まれる。しかも、理想的にはこの膜タンパク質が膜に入った状態での構造が必要である。この様な高分解能の構造解析を目指して、高度好熱菌(Thermus thermophilus)からV-ATPaseを精製する系を立ち上げた。Triton X-100などの界面活性剤を検討して、安定に精製できるシステムを構築した。この分子は、V1とV0ドメインが乖離する傾向にあるので、精製後できる限り素早く結晶化を試みることによって、2次元結晶が作製できる条件を発見した。我々の研究室には、独自に開発した極低温高分解能電子顕微鏡が設置されているが、この極低温電子顕微鏡で高い傾斜角度までの高分解能の位相と振幅情報を収集するためには、電子顕微鏡観察用の試料を作製する必要がある。それゆえ、現状では高分解能の立体構造解析は不可能であるが、極低温電子顕微鏡像の解析から、投影構造を解析することに成功した。その結果、現在まで議論が続いているV0ドメインのサブユニットの数についての新しい知見を得ることに成功した。すなわち、V0ドメインは、近似的に12回対称を有する構造を持っていることが明らかになった。これはこれまでに知られていない新しい興味深い結果である。 このように、V-ATPaseの精製と2次元結晶化、それと電子線結晶学を用いた膜タンパク質の構造研究について重要な研究成果を上げ、現在も研究を推進している。
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