2006 Fiscal Year Annual Research Report
シュードモナスシリンゲ菌の病原性におけるべん毛運動能とバイオフィルム形成の役割
Project/Area Number |
06F06199
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
一瀬 勇規 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HOSSAIN Md. Mijan 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | べん毛 / swarming / polyphosphate kinase |
Research Abstract |
これまでにモデル病原細菌Pseudomonas syringae pv.tabaci(タバコ野火病菌)6605では0.5%寒天培地上におけるswarming運動能が、本菌の病原性の強さと正の相関関係を示すことが見いだされている。本研究では動物病原細菌でswarming運動能や病原性・バイオフィルム形成に必要な遺伝子として見いだされているppk(polyphophate kmase)遺伝子に着目した。p.syringae pv. tabaciの近縁種で、全ゲノム配列が解読されているP.syringae pv phaseolicola 1448Aではppk遺伝子はゲノムに1つしか存在していない。そこで、まずp.syringae pv.tabaciから対応する遺伝子をPCR法を用いて単離した。塩基配列の解読結果、ppk宣伝子は各種細菌において高く保存されていた。ppk遺伝子の内部に欠損を導入し、接合法により本菌野生株に導入後、相同性組換え法により、ppk遺伝子欠損株Δppkを作出した。まず、Δppk変異株と野生株のpolyphosphateを定量した。その結果、変異株には野生株の0.1-0.2%程度のpolyphosphateしか無いことを明らかとなり、本菌変異株では実際にpolyphosphateが蓄積しないことを確認した。さらに、Δppk変異株と野生株のswimming運動能、swarming運動能、細胞外多糖の生産、病原性、菌体密度感知機構における本菌のシグナル分子アシルホモセリンラクトンの合成、高温や過酸化水素処理などの物理的ストレスに対する耐性を解析した。その結果、本菌のswimming運動能に野生株との差は見いだされなかったが、病原性により密接に関連するswarming運動能は低減していた。また、アシルホモセジンラクトンの生産量が減少した。さらに高温処理や過酸化水素などの物理的刺激に対する耐性が低く、本変異株は宿主タバコに対し病原性が大きく低下した。これらの結果から、本変異株を植物に接種した場合に、植物の防御応答により生産される活性酸素に高い感受性を示し、swarming運動能も低いため、防御応答を回避することもできず、発病能力が低下したと判断した。これらの研究結果は、今年の夏にイタリアで開催されるMolecular Plant-Microbe Interactions国際学会において発表を予定しており、現在、国際学術誌に投稿準備中である。
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