Research Abstract |
南九州の宮崎市で,越冬し多年利用可能なネピアグラスの矮性晩生品種(Dwarf-late;以下DL)は,肉用牛や乳用牛の放牧利用に適することが明らかになっている。また,南九州はわが国の中で最大の畜産基地の一つであり,産生する家畜糞尿の適切な処理として,家畜糞尿を嫌気的にメタン発酵し発電利用できるバイオガスプラントが挙げられるが,そこから産出される有機物発酵消化液(以下消化液)を有効利用する必要がある。そこで本研究では,南九州の宮崎市において,造成後2,3カ年目のDL草地に化成肥料と消化液の施用区を設置し,乳用牛による輪換放牧の可能性を検討した。 2005年5月18日に,DLネピアグラスの放牧草地5区(1区20a(50m×40m),合計1ha)を,発根分げつ苗の栄養繁殖により,1株/m^2(畦間1m,株間1m)の栽植密度で造成し,造成2,3カ年目の2006,2007年に試験に供した。草地管理として,2006年では各牧区に,N,P_2O_5,K_2Oの成分量で各々17.0g/m^2を,化成肥料により3回に分けて施用した。2007年では,牧区1〜3を2つに分け,消化液を生育季節の合計で,m^2当たり4.6L(9.9gN)を4回に分けて施用する牧区1〜3の半分の区(D区)と,牧区1〜3の残り半分および牧区4,5の全体では,化成肥料でN,P_2O_5,K_2Oの成分量により,各々11.2g/m^2を4回に分けて施用する区(C区)とを設けた。乳用牛20〜22頭の輪換放牧を,2006年では3周期,2007年では4周期各々行った。その結果,施肥の種類(化成肥料あるいは消化液)は,南九州におけるDLネピアグラス草地の乳用牛による輪換放牧利用に及ぼす影響には,草量や被食量などの面ではほとんど差異が認められなかったが,最終周期のみにおいて,被食量と乳用牛の乾物摂取量が,D区で高くなる傾向であった。 したがって,消化液は速効的な「有機」肥料であることが示され,バイオガスプラントから産生される消化液は,矮性ネピアグラスの乳用牛による輪換放牧利用に組み込むことのできる肥料であることが明らかとなった。
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