2007 Fiscal Year Annual Research Report
バリの宗教に関する研究-ヒンドゥー教と仏教のシンクレティズムについて
Project/Area Number |
06F06303
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
安藤 充 Aichi Gakuin University, 文学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUGENG Tanto 愛知学院大学, 文学部, 外国人特別研究員
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Keywords | バリ / ヒンドゥー / Purwaka Bhumi / Sang Hyang Widhi / Bauddha Brahman |
Research Abstract |
本年度は古ジャワ語文献読解と現地調査の二本柱で研究を進めた。文献研究では、シヴァ教およびヒンドゥー教の綱要書と文学作品の読解を中心とした。その主な成果として、次の2点を挙げておく。 1.Purwaka Bhumiというジャワ・バリの宇宙観を描いた古ジャワ語テキストによれば、Sang Hyang Widhiが最高神としてヒンドゥー教と仏教の両方で受容されているとしている。現代のバリ・ヒンドゥー教でインドにはない最高神Sang Hyang Widhiを奉じるのは、インドネシア政府が「唯一神の信仰」を国是に掲げてから、このテキストで説かれるような概念を援用、強化したゆえとみられる。 2.Kunjarakarnaという仏教文学作品では、仏教の教義がヒンドゥー的な仕方で説明されている。 これら、シヴァ教と仏教の重層的ないし融合的な面、そして国家の宗教政策の影響もうけたバリ・ヒンドゥー教の変容については、次年度も継続して分析を深めていきたい。 なお、テキスト読解と並行して、文献データベースおよびテキストコンコーダンスの構築も進めており、最終年度には何らかの形で公開できるよう期している。 一方、現地調査は、バリのブッダクリン村でおこなったが、ここにはBauddha Brahmanと称される高位カーストが存在し、この地で仏教がバリヒンドゥーのカーストの中で高位に組み込まれていることが見て取れた。僧侶は出家でなく世襲となっていること、僧侶の妻も儀礼の準備やその執行において重要な役割をもっていることが観察された。また、バリヒンドゥーのカースト制度は、インドのような厳密なものではなく、寺院や家庭での儀礼の場においてのみ顕在する。それは言語の選択にも表れており、バリの人々は、公的あるいは仕事上の関係においては、階層を区別する体系をもつバリ語よりも、フラットなインドネシア語を用いる傾向にある。
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Research Products
(2 results)