2008 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルな経済と環境の下、環境政策と国際経済の相互支持性と相克性に関する研究
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06F06311
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
和気 洋子 Keio University, 商学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JUNG Woo Jong 慶應義塾大学, 商学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 国際競争力の改善と向上 / 国際炭素リーケージ効果 / 環境政策と国際経済 / 京都議定書の限界と補完性 / 国境税調整の国際環境影響 / 国際排出権取引市場 / CDMスキームの多様性 / 不確実性での意思決定 |
Research Abstract |
今年度は、本研究のテーマでもある環境政策と国際経済の相互支持性と相克性に関する去年の実証研究のデータ修正による研究結果の整合性を高めた。そして2年間の研究成果を取りまとめる作業にも重点を置き、その成果を公表した。 具体的には、EU提案が国境税調整のような措置として導入された場合、米国と中国の環境影響のみならず、EUひいては世界にもたらす経済及び環境効果を分析し、国境税調整が地球温暖化問題に果たして有効的政策措置であるか否かの政策評価を行った。まず、米国への国境税調整を行った場合、米国とEUの合計では、GDPO.011%の増加に対して、CO2は-0.138%となるが、米国への貿易措置による輸入減少を世界からの輸入拡大で調整した場合は世界GDPの0.002%増加に対し、CO2は0.101%増加する結果となり環境負荷への影響が大きい。さらに米国からの輸入減少をEUの生産拡大と他の地域からの輸入拡大によって均衡させた場合、世界GDPは0.004%増加に対し、CO2は0.009%増加となり、この場合でも環境負荷が大きく、先進国へのこのような措置はかえて地球温暖化問題を悪化させる結果となる。一方、途上国への効果は大きいが、その反発は大きく報復措置を招く恐れもあり、国際的にも容認できる状況ではない。一方、費用対効果の側面でみても、本分析での経済的損失に対するCO2削減量から削減コストを計算してみると、約184.5〜701.7$/tCO2にものぼり、現在の国際炭素マーケットでの取引価格の推移(約22〜25$/tCO2)からは経済性を無視した非効率的な削減としかいえない。そのうえ国際政治的なリスクを考慮した場合、決して有効な政策手段とはいえない。そのため排出権取引市場やCDMなどの国際枠組みの中で柔軟性を活かした措置をいかに活用するかに政策の焦点を合わせるべきである。
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