2007 Fiscal Year Annual Research Report
体制移行期の中国における「成長の質」に関するミクロ的研究
Project/Area Number |
06F06312
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 宏 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HE LiXin 一橋大学, 大学院・経済研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 中国 / 社会保障 / 所得再分配 / 年金改革 / 世代間衡平 / 所得移転 / 少子・高齢化 / 格差・貧困問題 |
Research Abstract |
一、社会保障制度変化による所得再分配効果の分析 中国都市家計に関する1980年代末から2000年代初めにかけての3時点のクロスセクションデータを用いて、社会保障制度の再分配効果を定量的に分析した。基礎的な分析結果は,2007年6月の日本中国経済学会2007年度全国大会において報告した。学会報告後,生涯所得から見た所得再分配効果の推計へと分析を発展させた。その結果、中国の社会保障制度は所得格差を縮小する再分配効果があるものの、1995年に比べてこの効果が低下し、相対貧困率が上昇したことと、この再分配効果は所得階層間の再分配ではなく主に世代間の再分配によって達成されたことなどが分かった。本研究結果は何立新・佐藤宏共著の英文論文に反映され、2008年4月に中国の南開大学で開催予定のCES(The Chinese Economists Society)2008年度年会にて報告し、その後英文学術誌に投稿する予定である。中国の所得分配に関する研究が多く存在しているが、社会保障制度と所得分配をリンクさせたミクロ的な分析はまだ稀である。そして、社会保障研究において世代間の比較はもっとも基本的な問題であるが,中国の社会保障に関する既存研究ではこのような世代別の実証分析はほとんど欠落していた。 二、年金制度改革と家計の貯蓄行動 1995年・1999年の2時点のクロスセクションデータを用いて、1997年の中国の公的年金制度改革が都市世帯の貯蓄行動に与えた影響を分析した。その結果、年金改革による年金資産の減額が家計貯蓄率を引き上げたことを検証した。この結果はライフサイクル仮説と整合的である。本研究は何立新・佐藤宏・封進(中国復旦大学准教授)の共同研究であり,研究結果は共著の中国論文として既に査読付き学術誌に投稿した。本研究は中国の公的年金改革と貯蓄の関係に関する個票データを用いた初めての実証分析である。
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Research Products
(4 results)