2008 Fiscal Year Annual Research Report
体制移行期の中国における「成長の質」に関するミクロ的研究
Project/Area Number |
06F06312
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
佐藤 宏 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HE Li Xin 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 経済事情 / 中国 / 制度 / 年金改革 / 世代間衡平 / 所得再分配 / 少子・高齢化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、制度・政策分析と都市家計の個票データを用いた計量分析を通じて、中国における「成長の質」を、公的年金を通じた所得再分配という観点から検討することにある。平成20年度における主な成果は以下の3点である。(1)1995年・1999年の2時点のクロスセクションデータを用いて、1997年の中国の公的年金制度改革が、都市世帯の貯蓄行動に与えた影響を定量的に評価した。その結果、年金改革による年金資産の減少が家計貯蓄率を引き上げる効果をもったことが実証された。この事実発見は、ライフサイクル仮説と整合的である。中国家計の貯蓄行動に関する先行研究は数多くあるが、公的年金改革の効果を明示的に取り入れた実証研究は、本研究が初めてである(何・封・佐藤2008)。(2)中国都市家計に関する1980年代末から2000年代初めにかけての3時点のクロスセクションデータを用いて、社会保障制度の再分配効果の計量分析を行った。その結果、中国の社会保障制度は所得格差を縮小する再分配効果をもつものの、1990年代後半から2000年第初めにかけて、その効果が低下し、相対貧困率が上昇したことが示された。社会保障を通じた所得再分配は、所得階層間の再分配ではなく主に世代間の再分配によって達成されたことも明らかになった(何・佐藤2008)。(3)研究の総まとめとして、中国の公的年金制度を包括的に論じた学術書(何立新2008)を公刊した。既存の研究と比較して、制度・政策・実証分析のバランスに配慮した、2005年に実施された直近の年金制度改革の影響をいち早く分析した点が特筆される。
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Research Products
(4 results)