2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06317
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本堂 武夫 Hokkaido University, 低温科学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
EKAYKIN Alexey Anatolievich 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 同位体組成 / 南極 / 堆積後効果 / 氷床コア / 古気候 / 室内実験 / 雪氷学 / ボストーク湖 |
Research Abstract |
氷床コア研究では、水素・酸素の安定同位体比情報から過去数十万年にわたる地球の気温を復元し、地球環境の歴史を明らかにしてきた。本研究は、その確度に影響を与える積雪中での水素・酸素安定同位体の分別過程を実験的に明らかにすることが目的である。 堆積後の雪の同位体組成変化に関する室内実験を完了し、ほぼ所定の目的を達成した。-50℃の低温室で、粒子径などの違う積雪サンプルの温度および温度勾配をコントロールして、実際の氷床で想定される様々な温度条件下に長時間置かれた雪の状態を再現した。その雪ブロックから採取した雪サンプル中の安定同位体濃度を測定して、安定同位体組成が実験前と後でどのように変化するかを調べた。合計で8回の実験を約450日間かけて実施した。実験の温度範囲は-35から-5℃で、最初の雪の水素同位体比は-440から-70‰であった。また、温湿度に関しては約580,000データを収集し、実験条件を完全に記述すことを可能にした。さらに、積雪中の同位体鉛直プロファイルの変化過程を知るために、約270サンプルを準備し、水素同位体組成を分析した。 実験の結果、雪の堆積後の同位体比変化は温度に対して指数関数的に強く依存することおよび積雪の粒子径や密度には依存しないことが明らかになった。すなわち、温度が高くなればなるほど、積雪中の雪と空気の間での物質の移動が活発になり、同位体比の変化は大きくなる。このような結果をもとに、VostokやDome Fujiのような南極内陸部における、堆積後の安定同位比の変化を推測すると4-8‰となり、測定値に10%前後の変化をもたらすと予測される。この値は、これまでの気候復元に深刻な修正を迫るものではないが、精密な議論が進められている中にあって、この効果を取り入れた補正を行うことが重要になる。これまで、堆積後の安定同位体組成の変化が無視できないという指摘はあったが、今回その変化の大きさおよび主たる要因が明らかになったことの意義は大きい。
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Research Products
(6 results)