2006 Fiscal Year Annual Research Report
多金属複合触媒による高選択的反応の開発と炭素クラスター化合物への応用
Project/Area Number |
06F06345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 栄一 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NORINDER K Jakob 東京大学, 大学院理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 炭素炭素結合生成 / 炭素水素結合活性化 / 鉄 |
Research Abstract |
本研究課題では,多金属複合触媒,特に遷移金属と典型金属の組み合わせを利用した高効率・高選択的有機合成反応の開発と応用を目的として研究を行っている.本年度は,鉄を触媒とする新規な芳香族炭素-水素結合活性化/炭素-炭素結合生成反応を開発することができた.以下にその概要を述べる. 鉄は資源豊富(安価)でかつ無毒(低環境負荷)な金属として,有機合成触媒としての利用が期待されているが,いまだその適用範囲は狭く,開拓の余地が多く残されている.一方,遷移金属触媒による炭素-水素結合の解裂を伴う炭素炭素結合生成反応は,最も直接的な有機分子変換法として注目を集め,精力的に研究されてきた.しかし,従来は一般的にロジウム,ルテニウム,パラジウム等の希少貴金属が主に触媒として用いられてきており,安価な遷移金属を使った反応はほとんど知られていない. 最近当研究室において,鉄を触媒とする2-プロモピリジンとフェニル亜鉛試薬の反応において,交差カップリング体である2-フェニルピリジンとともに,そのベンゼン環の2位がフェニル化された化合物がごくわずかに生成することが見出された.本反応について,金属塩,配位子,添加剤,反応温度などの種々の検討を加えた結果,以下の反応条件で鉄触媒による2-アリールピリジン類の芳香族炭素-水素結合活性化/炭素-炭素結合生成が効率的に進行することを見出した.すなわち,塩化鉄(III)と二座窒素配位子からなる鉄触媒(10-20%)の存在下,0℃で2-アリールピリジンに対してアリール亜鉛試薬を作用させる.この際,反応系内に何らかの酸化剤が存在すると基質のアリール化が進行することが分かった.種々の酸化剤を検討した結果,酸素を徐々に導入した場合に最も収率よく生成物が得られることを見出した.
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