2008 Fiscal Year Annual Research Report
多金属複合触媒による高選択的反応の開発と炭素クラスター化合物への応用
Project/Area Number |
06F06345
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 栄一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
NORINDER K.Jakob 東京大学, 大学院・理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機金属化学 / 炭素炭素結合生成 / 炭素水素結合活性化 / 均一系触媒 |
Research Abstract |
本研究課題では,多金属複合触媒,特に遷移金属と典型金属の組み合わせを利用した高効率・高選択的有機合成反応の開発と応用を目的として研究を行っている.本年度は,鉄触媒とアリール亜鉛反応剤を用いたアリールピリジンおよびアリールイミン類の直接アリール化反応の開発に成功した.以下にその概要を述べる. 前年度の研究において,鉄塩とビピリジン型配位子からなる触媒前駆体の存在下,アリールピリジンに対してアリール亜鉛反応剤を作用させると,ピリジル基近傍の炭素-水素結合がアリール化されることを見つけていた.今年度はまず本反応の最適化を完成させ,速報として報告した.続いて,本触媒系の適用範囲を拡大するべく検討を行った.その結果,官能基変換が容易であり,合成化学的価値の高いアリールイミンに対しても良好に直接アリール化を行うことができた.さらに興味深いことに,本触媒系のもとでは,通常クロスカップリング反応において良い脱離基となる芳香族臭化物,塩化物,およびスルホン酸エステル部位を有する基質に対しても,これらの官能基を損なうことなく高収率で直接アリール化を行うことができた. 遷移金属触媒による炭素-水素結合の変換反応は,最も直截的な有機分子変換法として注目を集め,過去10年余りに渡って精力的に研究されてきた.しかし,従来の反応は一般的に希少貴金属触媒を用い,過酷な反応条件を必要としてきた.本研究で開発した反応は,資源豊富でかつ低毒性な鉄を触媒として用いた直接アリール化反応として初めての例であると同時に,極めて温和な条件で進むことも特筆すべきである.今後,本研究を契機として鉄触媒を用いた分子変換化学がますます発展することが期待される.
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