2007 Fiscal Year Annual Research Report
高次機能性ナノ金属錯体:スピンクロスオーバーや伝導性を示す単分子量子磁石の創製
Project/Area Number |
06F06351
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG Shi 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 分子磁性 / 結晶構造 / 複合物性 / 量子磁石 / 伝導性 / スピンクロスオーバー |
Research Abstract |
本研究においては,分子一つ一つが磁石として振舞うナノ磁石(単分子磁石・単一次元鎖磁石)を研究対象とし,これらに電気伝導性やスピンクロスオーバーなどの物性を付加することにより,量子磁性と伝導性などが共存する高次機能性ナノ金属錯体の創製を目的としている。本年度は,昨年度に引き続き単分子磁石として振舞うMn(III)-Cu(II)複核錯体と種々の伝導性物質との複合錯体の合成を試みた。Mn(III)-Cu(II)錯体は,Mn(III)イオンに配位した塩化物イオンがあり,これをAgPF_6と反応させることにより,Mn(III)-Cu(II)のカチオン錯体が生成する。したがって,伝導性錯体を与える分子でアニオン性の金属dmit錯体やTCNQ等との反応を試みたが,Mn(III)-Cu(II)のカチオン錯体の安定性が低く,アクセプター分子との反応中に分解してしまうため,目的とする錯体が得られなかった。そこで,本年度の後半は,新しい物質系の探索として3回対称軸を有するトリフェニルアミンを基礎骨格に持つ配位子の合成とそれを用いた金属錯体の合成を試みた。トリフェニルアミンを母骨格とするオリゴマーは,有機EL等の有機半導体デバイスにおけるホール輸送材料として用いられており,この骨格を組み込んだ金属錯体にはホール伝導性が期待できる。また,この分子から誘導される金属錯体は3回対称性を有することが期待され,それに伴う結晶構造と物性,たとえばフラストレートした磁気物性等も期待される。本年度は,中心にトリフェニルアミン骨格を持つ配位子の合成を行った。トリニトロフェニルアミンを原料に用い,ニトロ基を還元してアミノ基とした後,サリチルアルデヒドと反応させることにより,シッフ塩基とした。この三箇所にシッフ塩基配位部位を導入した分子の合成には既に成功しており,現在この配位子を用いた貴族錯体の合成を試みている。
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