2008 Fiscal Year Annual Research Report
ナノグラファイトの特異な磁性と電界効果トランジスタを用いた電荷・磁性制御
Project/Area Number |
06F06353
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
榎 敏明 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JPSEPH Joly V. L. 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ナノグラフェン / ナノグラファイト / 磁気緩和 / ナノポア / 磁性 / 気体吸着 |
Research Abstract |
ナノグラファイト・ドメインが3次元無秩序ネットワークを構成する活性炭素繊維において、ESR、静磁化率、電気伝導度測定により、エッジ状態スピンの磁気構造とその動的性質の解明をおこなった。ESR測定から、その線幅は温度の低下に伴って直線的に減少し、約20K付近で急激に増加し、それ以下の温度で温度依存性のない線幅の挙動を示した。また、静磁化率はCuire的な局在スピンの挙動を測定全温度領域で示した。一方、ESR測定により求めた磁化率はマイクロ波強度依存性を示し、1μWでは、線幅の急増する20Kにおいて鋭いピークを持ち、その低温側で減少する傾向を示した。また、IOμWではピークは消滅した。更に、マイクロ波強度依存性は、ピークを示す温度の上では、均一スピン系が示す飽和曲線を示し、ピーク温度の下の温度では、不均一スピン系としての挙動を示した。このことに加え、ピーク温度直下の温度で、大きなマイクロ波エネルギー(15mW)でのESRシグナルには、ホールバーニング現象が観測された。以上の結果は20K以下の温度領域でエッジ状態スピン系が不均一な非平衡スピン状態となっていることを示している。ナノグラファイト・ドメインを構成するナノグラフェン・シートは不規則な構造を持ち、ジグザグ端の最近接サイト間の強い強磁性相互作用とジグザグ端間の弱い強磁性/反強磁性相互作用の連携により発生する正味の磁気モーメントを持つフェリ磁性状態を形成し、それぞれの磁気モーメントの大きさに大きな分布を持つため、ESR線幅は不均一幅をもつものと考えられる。20K以下の特異な挙動は、ナノグラフェン・シート間の電子ホッピング頻度が急激に減少する低温では、ナノグラフェン・シートそれぞれが非平衡スピン構造を持つことを示唆している。また、高温での線幅の挙動はs-d相互作用と類似の局在エッジ状態スピンとπ伝導電子との相互作用により説明される。
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