Research Abstract |
これまで,温度やpHなどに反応する刺激応答性ゲルは多く報告されているが,磁気応答性ゲルの生成は,まだ十分に研究されていない分野である。本研究では,架橋点が高分子ネットワークと磁性粒子からなる新規の磁気マテリアルを開発することを目的とし,磁気応答性ゲルの調製について検討した。 1.既報に従い,水素化ホウ素ナトリウム存在下で磁性ナノ粒子を調製した。透過型電子顕微鏡観察の結果,平均直径50nmの均一な磁性ナノ粒子であることが確認された。 2.磁性ナノ粒子表面からの表面重合のために,両末端にトリクロロシランを有するアゾ開始剤(開始剤A),片末端反応性のATRP型開始剤(開始剤B)を合成した。 3.開始剤A,Bを,磁性ナノに粒子グラフト化した。FT-IR,1H-NMR,13C-NMRによる分析の結果,高密度でグラフト化されていると示唆された。 4.スチレン,メタクリル酸メチル,メタクリロニトリル,N-ビニルイミダゾールなどの市販のモノマーを用い,開始剤グラフト化磁性ナノ粒子を開始剤として表面重合を行った。スチレンの表面重合中に,溶媒がゲル化することが確認された。おそらく,磁性ナノ粒子が架橋点となり,ゲルを形成したと考えられる。このような磁気応答性オルガノゲルはこれまで報告されておらず今後さらに評価を進める。 さらに,生体親和性のモノマー(ε-アクリロイル-L-リジン)の重合を水中にて,開始剤をグラフト化したシリカと磁性ナノ粒子を用いて原子移動型ラジカル重合を行った。今後,タンパク質のラベリングを目的とした磁性ナノ粒子材料として展開する計画である。
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