2007 Fiscal Year Annual Research Report
高濃度のヒ素を含む地下水中の多成分輸送と除去システム設計のためのモデルの開発
Project/Area Number |
06F06396
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神野 健二 Kyushu University, 工学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HALIM Md.Abdul 九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | ヒ素 / 地下水 / 鉄水酸化物 / 多成分輸送モデル / 酸化還元 / カラム実験 |
Research Abstract |
地下水による慢性ヒ素中毒は多くの国で深刻な社会問題になっている。特にインド、バングラデシュでは広域でヒ素による地下水汚染が確認されており、多数の慢性ヒ素中毒患者が発生している。国内では、世界保健機関(WHO)の勧告を受けて当時の厚生省が1992年にヒ素の水道水質基準を0.01mg/Lに改訂し、国内各地でも地下水ヒ素汚染が報告されるようになった。ヒ素除去システムの設計及び地下水中でのヒ素の動態の把握のために、地下水中のヒ素輸送モデルの構築は重要な課題である。 土壌中及び地下水中では、ヒ素の多くが3価及び5価の無機態として存在し、土壌中に存在する鉄の水酸化物によく吸着されるということが知られている。鉄の多くが水酸化第二鉄として存在するような酸化環境下では、土壌中に存在するヒ素の多くは鉄を含む堆積物に吸着されている。この堆積物が還元環境下におかれると、水酸化鉄の沈殿物は不安定となって分解し、吸着されていたヒ素が可溶化して溶出する。このような溶出機構は還元プロセス型ヒ素汚染ということができる。 研究の第一段階として、上述のような鉄とヒ素の化学的相互作用に着目し、鉛直一次元のカラム実験を行った。その結果、土壌が還元環境になると鉄が溶出し始め、同時期にヒ素濃度が増加し始めた。また、還元状況下で鉄とヒ素を含む水が酸化環境におかれると、水中の鉄、ヒ素濃度はそれぞれ低下した。これにより還元状況下で溶出したヒ素、鉄を曝気させることでヒ素を除去できる可能性があることが本実験によっても示された。第二段階として、微生物の増殖による酸化還元反応を考慮した鉛直一次元の多成分輸送モデルの開発を行った。具体的には、酸化還元反応にかかわる化学種(溶存酸素、鉄、マンガン、硝酸イオン、硫酸イオン、有機態炭素)およびヒ素の濃度について数値計算を行った。本モデルにより時間経過による微生物の増殖と、それに伴う鉄、ヒ素の溶出を表現することができた。
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Research Products
(4 results)