2006 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュ農村における貧困緩和と環境調和的技術進歩-ゲールファーミング農法-
Project/Area Number |
06F06439
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長南 史男 北海道大学, 大学院農学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BARMON Basanta Kumar 北海道大学, 大学院農学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | ゲール農法 / 近代農法 / 総合要素生産性 TFP / 環境調和的技術進歩 / 持続可能性 / 灌漑システム / 水稲、エビの複合生産 / 貧困緩和 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1990年代に急速に普及し、農業所得を高め、農村に滞留する貧困層に新たな雇用を創出したゲール農法の経済性と持続可能性を、アモン-ボロの伝統的な水稲農法との比較において明らかにすることである。ゲールとは汽水地帯において雨季のエビ養殖、乾季の水稲栽培を可能とする構造をもつ、水田である。 本年度(平成18年10月1日〜平成19年3月31日)は、研究計画に従って、以下の研究を実施した。まず、両農法における環境・生態的学的側面から持続性を評価するため、各種投入物(エビ生産のための飼料、約15種類と水稲生産のための化学肥料)と産出物(エビとコメ)に含まれる養分量を化学分析した。また、土壌中における養分動態を明らかにするため、水稲移植時(エビ生産の終了時)と水稲収穫時(エビ生産の開始時)の2時点で土壌試料をサンプリングし、その化学組成(窒素・リン・カリウム)の動態変化を分析した。その結果、ゲール農法の土壌は両時点できわめて高い総窒素量比率がえられ、窒素がエビ養殖時の飼料残滓により供給されていると推測可能である。このことは、ゲール農法のボロ生産において、化学肥料使用が押さえられている(低コストである)ことと無縁ではない。また同時に、持続可能性の観点からは窒素過剰の問題が生じていることを示唆する。 一方、農家調査の結果を利用して総合投入産出指数を計測し、経済効率性を比較分析した。投入要素のうち家族労働評価の精度が十分でないために結論するには至らないが、ボロの総合生産性の平均値は、ゲール農法と近代農法(アモン収穫後)とで大きな差はみられないが、前者の分散がきわめて大きいという特徴がある。すなわち、エビ生産後のボロの生産性を高める可能性が大きく残されている。次年度の課題は、農家調査の精度を高め、この点を明らかにすることである。
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Research Products
(1 results)