2007 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュ農村における貧困緩和と環境調和的技術進歩-ゲールファーミング農法-
Project/Area Number |
06F06439
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長南 史男 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BARMON Basanta Kumar 北海道大学, 大学院・農学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | ゲール農法 / 近代農法 / 総合要素生産性(TFP) / 環境調和的技術進歩 / 持続可能性 / 灌漑システム / 水稲、エビの複合生産 / 貧困緩和 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1990年代に急速に普及し、農業所得を高め、農村の貧困層に新たな雇用を創出したゲール農法の経済性と持続可能性を、アモン-ボロの伝統的な水稲農法との比較において明らかにすることである。ここで、ゲールとはローカルな造語で雨季にエビ・プローン養殖し、乾季に水稲を栽培する農法の総称である。 本年度は、研究計画に従って、5月に現地調査を実施し、以下の研究成果を得た。汽水地帯のプローン養殖後の水稲栽培において水稲2期作に比べて、化学肥料投入量は少量であるにもかかわらず4-5トン/haの単収である。新たな農法は化学的な土壌分析結果から以下の特長をもつことが明らかである。第一に、ゲールの構造によってモンスーンの降雨が養魚池に貯水され、これによって表土の塩類が洗い流され、ボロ水稲移植時の塩害を緩和する効果をもっている。すなわち、ゲール農法を採用しているビルパブラではボロ作の塩類濃度(電気伝導度、EC)は稲作移植時に低く、塩害の影響を小さくしている。第二に、稲作期間における全有機物(全窒素・炭素、Total C,N)の減少はわずかであったが、可給態窒素(熱水抽出アンモニア態窒素,Hot water-soluble NH4-Nとして定量)の減少が著しく、これはエビ養殖期間に蓄積された可給態窒素がイネ生産に有効に利用されたと考えられる。これは飼料給与量の農家調査によって裏付けられた。 また、農家調査の結果を利用して総合投入産出指数を計測し、経済効率性を比較分析した。ボロの総合生産性の平均値は、ゲール農法と近代農法(アモン収穫後)とで大きな差はみられないが、前者の分散がきわめて大きく、エビ生産後のボロの生産性をさらに高める可能性が大きく残されている。
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Research Products
(4 results)