2008 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュ農村における貧困緩和と環境調和的技術進歩-ゲールファーミング農法-
Project/Area Number |
06F06439
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長南 史男 Hokkaido University, 大学院・農学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BARMON Basanta Kumar 北海道大学, 大学院・農学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | ゲール農法 / 近代農法 / 総合要素生産性(TFP) / 環境調和的技術進歩 / 持続可能性 / 灌漑システム / 水稲、エビの複合生産 / 貧困緩和 |
Research Abstract |
本研究の目的は、農業所得を高め、農村の貧困層に新たな雇用を創出したゲール農法の経済性と持続可能性を、アモン-ボロの伝統的な水稲2期作との比較で明らかにすることである。ここで、ゲールとは、雨季にエビ・プローンを養殖し、乾季に水稲を栽培できる構造をもつ土地利用のことで、1990年代に急速に普及した。 ボロ単収はゲールのほうが、少肥にもかかわらず、水稲2期作より17%も高い。土壌分析結果によれば、雨季、乾季の両時点で土壌中の総窒素量比率がきわめて高く、エビ養殖時の飼料残滓により窒素が供給、蓄積されていると考えられる。したがって、ゲール農法のボロ作では化学肥料の投入を減少させ、費用を節約し、塩害もなく、安定的な水稲単収をえることができる。しかし、ボロ作の総合生産性の分散は大きく、土壌中の窒素過剰傾向がみられ、持続可能性の観点から問題が生じている可能性がある。このため現地調査により堀の維持管理(土壌の天地返し)、収穫後の強制排水、水管理の効果など、ゲールの維持管理行動を明らかにした。プローン養殖後に堀の底部のヘドロをポンプ排水する農家が現れ、これによって基幹排水路の水質も悪化しつつある。 プローンの流通構造については、稚エビや飼料などを農家に販売し、農家からプローンを購入する現地仲買人の役割を調査し、技術普及への貢献や雇用の増加を調査・分析した。 総じて、ゲール農法の普及によって農業生産性が向上し、農家所得が増加、とりわけ雇用の創出効果はきわめて大きく、農村経済の活性化は著しいと結論される。また、持続性の観点から投入要素の効率的利用、排水幹線の汚濁などの外部不経済に対する対策が必要とされる。
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Research Products
(3 results)