2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国における農地流動化システムと大規模経営の展開に関する研究
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06F06440
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横川 洋 九州大学, 大学院農学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHEN Tinggui 九州大学, 大学院農学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 農地流動化 / 仲介組織 / 大規模経営 / 地代 |
Research Abstract |
本研究に関する内外先行研究を整理し、1980年代から農地流動化と大規模経営推進に関する国及び調査地の法律・政策などを整理した。その上、2007年1月23日から2月2日にかけて重慶市を、3月21日から24日をかけて山東省と江蘇省を実地調査した。調査の焦点は大規模経営体の営農類型、農地流動化の仲介組織の育成、地代形成のメカニズムの三点に当てた。実際に訪問した政府機関は重慶市農業局、重慶市農業委員会、重慶市江北区農林水利局、重慶市大渡口区農林水利局、山東省農業庁、山東省章丘市農業局、江蘇省常州市農業局であり、調査した農業大規模経営体は重慶樵坪米業有限会社(重慶市巴南区)、小平葡萄園(重慶市南岸区)、盛苑花卉工程有限公司(山東省章丘市)、晶栄食品有限公司(山東省章丘市)、柴家「緑祥」ニラ専業合作社(山東省章丘市)、厚余花卉公司(江蘇省常州市)、常州紅大米業(江蘇省常州市)、金〓市江南春米業有限公司(江蘇省常州市)である。 調査した大規模経営体は優良農地(国家基本農田)を集めているが、作目としては稲作を中心とする穀物生産を行っている経営体が非常に少ない。2004年から始まった中国の食料貿易赤字が長期化すると予想されるなかで、大規模経営体の営農類型選択は重要な意味を持つことになる。調査した三つの地域にも仲介組織が形成されている。零細な農地流動においては仲介組織が大きく機能している。しかし、連坦した大規模の借地については、鎮政府や村民委員会の斡旋がやはり不可欠である。地代形成のメカニズムについては、大規模経営体の借地において、地代が自作収益を上回ることもある。その形成要因は需給理論から説明できる。貸出(供給)の農家は殆ど三ちゃん農業になっているにもかかわらず、超小規模のため経営は追加投資なしで行えるはずであるし、他方、三ちゃんのゆえ、他産業から得る収入のチャンスが非常に少なく、結果として農地賃借の機会費用が自作収益に近くなる。そのため、自作収益に近い地代を要求するのである。一方、借入(需要)の企業にとっては、一般穀物に比べて優位性の高い他品目(果樹、野菜)を経営するため、穀物耕作の自作収益に近い水準の地代を提供することが可能である。この点において需給が均衡に達すことになり、高地代が成立することになる。
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