2007 Fiscal Year Annual Research Report
血液細胞分化におけるエピジェネティックな遺伝子発現制御
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06F06465
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
仲野 徹 Osaka University, 生命機能研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHENG Jie 大阪大学, 生命機能研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 転写因子 / エピジェネティック / 遺伝子発現制御 / 細胞分化 / 造血 |
Research Abstract |
GATA-1は、赤血球・巨核球・好酸球の分化に必須な転写因子であるが、これらの細胞の分化を制御している機構は未だ不明な点が多い。我々は、マウス胚性幹細胞(ES細胞)からの試験管内血液細胞分化誘導法(OP9システム)と外来性遺伝子発現法(TET-Offシステム)、及びGATA-1欠損ES細胞株を用いて、GATA-1の発現量を完全にコントロールできるシステムを構築し、GATA-1の機能解析を行った。ES細胞をOP9システムにより分化誘導すると、3〜5日目付近では中胚葉系細胞へと分化する。我々は、GATA-1欠損ES細胞を5日間分化誘導後、外来性GATA-1を発現させることにより、その後の好中球産生が大幅に増加することを見出した。一方、野生型ES細胞を分化誘導後、外来性GATA・1を発現させた場合、及びGATA-1欠損ES細胞を3日間分化誘導後、外来性GATA-1を発現させた場合では、好中球産生増加は誘導されなかった。さらに、GATA-1欠損ES細胞へ相同組み替えによりloxP配列で挟まれたGATA-1遺伝子を戻した場合、外来性GATA-1による好中球増加は認められなくなること、Creを用いてGATA-1の再欠損を誘導すると、再び外来性GATA-1による好中球増加が認められることが明らかとなった。これらの結果、及び野生型ES細胞では分化誘導3日目から内在性GATA-1が発現することから、分化誘導3〜5日目の中胚葉系細胞においてGATA-1は、血液細胞分化後の好中球の細胞増職に影響を与えているものと考えられた。そこで、野生型ES細胞とGATA-1欠損ES細胞から5日間分化誘導した細胞から中胚葉系細胞(FLK-1陽性細胞)をセルソーターにより単離し、外来性GATA-1の過剰発現を行った結果、GATA-1欠損Flk-1陽性細胸のみが外来性GATA-1による好中球増加を示し、FLK-1陽性細胞においてGATA-1は、将来、血液細胞へ分化後の細胞の特性を決定していることが明らかとなった。これらの結果からGATA-1は中胚葉系細胞において、DNAのメチル化などのエピジェネティックな修飾を変化させている可能性を考え、DNAメチル化阻害剤5-AzaCを分化誘導3〜5日目のGATA-1欠損細胞に一過的に加えて培養すると、5日目からの外来性GATA-1による好中球産生増加は阻害された。以上の結果から、造血発生初期において、GATA-1が血液細胞へ分化後の細胞の特徴を決定しているメカニズムには、エピジェネティック修飾の変化が関与していることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)