2006 Fiscal Year Annual Research Report
高温超電導物質における電子格子相互作用に関する研究
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06F06553
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
大柳 宏之 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 主幹研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG Changjin 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 外国人特別研究員
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Keywords | 高温超電導 / 磁性不純物 / X線吸収分光 / 局所構造 / 不均一性 / 電子格子相互作用 |
Research Abstract |
高温超伝導は発見以来、20年が経過したが、基本的な機構については未だに不明な点が多い。これは強相関物質の複雑な電子状態が構造に極めて敏感なために、重要因子を絞り込むことの困難さによるところが大きい。またスピンゆらぎによる純粋な電子的な超伝導機構に隠れて注目されてこなかった電子格子相互作用の重要性を示す実験結果があいついで報告されており、スピン、格子を正当に取り込んだ超伝導理論の整備がすすめられている。当該JSPSフェロー申請者は超伝導物質への磁性金属(Mn)ドープ効果が従来の予測(Abrikosov-Gork'v理論)では説明がつかないことをみいだしている。平成18年度には、高温超伝導物質であるLa2-xSrxCuO4(LSCO)へMnドープされた粉末試料を用いて局所構造に関する研究を行った。具体的にはX線吸収分光の精密解析を行いMnイオンが銅原子を置換し伝導面に存在すること、銅原子の局所構造(酸素原子配位)がMnイオンの周辺のみ影響を受ける不均一な電子状態が出現している可能性を示した。このことはアンダードープ領域の異方的なフェルミ面や擬ギャップなど高温超伝導の特徴が不均一な電子状態と密接なつながりを持つことと矛盾しない結果である。この研究結果は高温超伝導現象が従来の考え方では説明できないことを示したものである。結果はPhys.Rev.Bに投稿し現在、印刷中である。 さらに異方的な電子構造を考慮することより精度の高い単結晶を用いた研究が必須であることから、研究の後半ではTSFZ炉を用いてMnドープLSCOの良質な単結晶の育成を行った。集中して結晶育成技術を習得した結果、当該フェローは純LSCOおよび一連のMn濃度を変化させた単結晶の育成に成功した。Mnを高濃度までドープしたLSCOの単結晶育成は世界で初めての試みである。単結晶を用いて精密な局所構造研究を行うには結晶の品質を高め信頼度を増すとともに、長期のマシンタイムが必要である。そのため充分なマシンタイムを確保する新規に放射光実験課題を申請中であるが、実験が可能になるのは平成19年度からとなる。これに先立って単結晶の配向状態、帯磁率などの基礎物性を評価し良質の単結晶が得られていることを確認した。また単結晶試料のX線吸収分光の予備的測定を行い粉末試料の結果を確認できた。
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Research Products
(1 results)