2006 Fiscal Year Annual Research Report
脳内還流法を用いたナノ粒子の神経-免疫軸への影響解析
Project/Area Number |
06F06585
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
小林 隆弘 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域・上級主席研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TIN-TIN Win-Shwe 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究領域, 外国人特別研究員
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Keywords | ナノ粒子 / カーボンブラック / マイクロダイアリシス / 神経伝達物質 / サイトカイン / HPLC / Real-time PCR / 神経免疫機能 |
Research Abstract |
我々はナノ粒子を気管内投与して炎症性細胞の肺への浸潤や免疫担当細胞間の情報伝達に働く物質の産生、及びリンパ節への粒子の移行について調べた。その結果、肺胞洗浄液中の炎症性細胞数の増加や炎症誘発性のサイトカイン、ケモカイン産生及びmRNA発現の増加、リンパ節への粒子の移行などが認められた(Tin-Tin-Win-Shwe et al.,2005,TAAP)。しかしながら、ナノ粒子の脳への移動の有無、または、神経免疫機能への影響についての知見は不十分である。本提案は、in vivoマイクロダイアリシスという脳内灌流法を用いて、ナノ粒子を点鼻投与したマウスの嗅球における神経伝達物質や免疫反応への影響を検出することである。本年度は、マウスの嗅球におけるin vivoマクロダイアリシス法を確立し、そこでの神経伝達物質であるグルタミン酸、glycine, taurineとGABA、または、炎症性サイトカインであるIL-1β,TNF-α mRNAの検出を目的とした。8週齢のBALB/c雄マウスを用いて、麻酔下で、嗅球にガイドカニューレを植え込み、ダイアリシスするまでに、stylet(ダミープローブ)を入れておいた。回復のため、6日以上マウスをケージにおいた。実験当日に、styletをマクロダイアリシスプローブに交換し、ポンプから人工脳脊髄液(aCSF)を流して、マウスでのマクロダイアリシス方法を確立した。その後、マウスを4グループ(vehicle+saline;カーボンブラック+saline ; vehicle+Lipoteichoic Acid(LTA);カーボンブラック+LTA)に分けて、vehicleとして0.075% Tween 80、模擬ナノ粒子として、14nm直径のカーボンブラック(250μg/100μl)を点鼻投与し、また6時間後にsaline及びLTA(5μg/100μl)を腹腔内投与し、嗅球内灌流液を採取し、アミノ酸神経伝達物質はHPLC法で測定した。LTA投与の5時間後に麻酔下で、脳を取り出し、嗅球における炎症性サイトカインIL-1β, TNF-α mRNA発現はReal-time PCR法で測定した。その結果、嗅球でのグルタミン酸とglycine濃度はvehicle投与群と比べ、カーボンブラック投与群では増加し、さらに、6時間後のLTA腹腔内投与では顕著に増加した。しかしながら、嗅球でのtaurineとGABA濃度ではカーボンブラックとLTAの影響が見られなかった。カーボンブラックを点鼻投与したマウスの嗅球における炎症性サイトカインIL-1 β, TNF-α mRNA発現は増加し、LTA投与後のIL-1 β mRNA発現では有意な相加効果を認めた。この結果、ナノ粒子が嗅球の神経伝達物質や炎症性サイトカイン産生に影響を及ぼしていることが明らかになった。
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