2006 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を利用したリガンド・受容体相互作用の分子及び細胞レベル研究
Project/Area Number |
06F06711
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
猪飼 篤 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YERSIN Alexandre 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / トランスフェリン / トランスフェリン受容体 / 相互作用力測定 / 膜タンパク質 / 生体ナノ力学 / ナノサイエンス / ナノバイオ |
Research Abstract |
本年度は血液中の鉄イオン輸送体であるトランスフェリンと、周辺細胞の細胞膜に存在する受容体の相互作用を原子間力顕微鏡を利用して測定した。まず、化学的に活性化した雲母表面にトランスフェリン受容体を架橋剤を用いて固定する。ついで、原子間力顕微鏡探針にはトランスフェリンを同様の方法で固定する。トランスフェリンを固定した探針とトランスフェリン受容体を固定した基板を接触させた後、両者を引き離す際の必要な張力の解析から、トランスフェリンとをの受容体の結合力を測定することができた。その大きさはおよそ40ピコニュートン程度であり、印加力依存性(loading rate dependency)が見られた。その依存性の解析から、活性化距離はおよそ3nm程度と見積もられた。さらに細胞膜表面での測定から、同様の結果が得られたので、我々が測定した結合力の値は生理的条件下で意味のある値であることが確認された。トランスフェリンが受容体に結合した後、細胞内にエンドサイトーシス機構により取り込まれるが、その際、複合体を取り込んだエンドソーム内のpHが低下すると、トランスフェリンとその受容体の結合力が弱くなることが予想されているので、in vitroの測定を溶液のpHを変化して行ったところ、弱酸性条件下で結合力が弱くなることが確認できた。トランスフェリンを結合した原子間力顕微鏡探針を用いて、生細胞膜表面からトランスフェリン受容体を引き出すときのフォースカーブの解析から、受容体は細胞骨格と結合していないか、していてもその結合は非常に弱いことが示された。このことは、一般に膜タンパク質と細胞骨格の連携と言う重要な現象を個別受容体分子ごとに、細胞に対しての障害を最小限にとどめて測定することができることを示唆する重要な結果であると考えた。
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