2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06729
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 埴 東京大学, 物性研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MULAZZI Mattia 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 高分解能光電子分光 / 高温超伝導体 / 表面電子状態 / スピン軌道相互作用 / FePd / 磁気散乱 / 軟X線回折 / 磁気ドメイン |
Research Abstract |
ホールドープ高温超伝導体Ca_<2-x>Na_xCuO_2Cl_2(NaCCOC)において、高分解能レーザー励起角度分解光電子分光(ARPES)測定を行った。試料サイズの小ささと取り扱いの困難さからこれまでほとんど測定されていなかった過剰ドープ試料(x=0.2)において、バンド分散の観測に成功した。今後角度依存性の測定を行い、フェルミ面形状や超伝導ギャップ対称性を調べると同時に、その組成依存性(特に不足ドープ試料におけるフェルミアークなど)についても検証を行う予定である。 銀(111)表面を対象とした高分解能レーザーARPESを行った。金属の表面電子状態については、近年特にRashbaスピン軌道(LS)結合によるフェルミ面の分裂が注目を浴びており、金(111)表面などでは明瞭に観測されている。しかし、よりLS結合の小さい銀ではいまだに分裂が観測された例がなく詳細が明らかではない。測定結果からは、銀の表面状態を反映して、Γ点を中心とする2次元的なバンド分散が観測された。このバンドにおいて、現段階では有意な分裂は見られていない。今後更に表面出し条件を絞り込み、高分解能測定によってフェルミ面分裂の有無・大きさの決定を目指す。 FePdの磁気ドメインは1次元的で、巾60nmくらいの軟X線の波長領域のサイズである。SPring-8の軟X線回折装置を用い、磁気散乱の実験を行った。その結果、ドメイン巾に対応する散乱が観測された。温度変化を取ったところ、ドメイン巾はほとんど変化せず、相転移温度に近づくにつれ、強度が減少していくことが明らかになった。この結果により、磁気的異方性などに基づく1次元的磁気ドメインのメカニズムについて議論を行っている。今後は、上記NaCCOC試料などを用い、チェッカーボードタイプの散乱を観測する予定である。
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