2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06F06729
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 埴 The University of Tokyo, 物性研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MULAZZI Mattia 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 表面状態 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
高いエネルギー、波数分解能を有する真空紫外レーザー励起光電子分光装置を用いて、金属の表面電子状態を角度分解光電子分光(ARPES)により調べた。 金属の表面状態においては、空間反転対称性の破れから生じるRashba型スピン軌道(LS)結合によりバンドが分裂することが知られており、近年ARPESにより直接観測されている。この分裂に際してフェルミ面におけるスピン縮退が解けるため、スピン依存電子輸送を基とするスピントロニクスの観点からも期待を集めている。これまでにLS結合の大きな系(AuやWなど)では明瞭に分裂(0.1eV程度)したバンドが観測されているが、Agではいまだに分裂が観測された例がなく詳細が明らかではない。本研究では、Ag(111)表面を対象とした高分解能ARPESを行い、表面状態を反映した2次元的なバンド分散の観測に成功した。得られたスペクトル幅はバンドの底部で12meV程度と鋭いが、Rashba分裂を示唆するようなピーク分裂は見られなかった。このことから、Ag表面におけるRashba分裂は非常に小さく、LS結合の大きさだけではなく他の要素(波動関数の形状等)を考慮する必要があることが示唆される。一方バンド分散にはキンク構造が観測され、これは表面状態における電子格子相互作用の重要性を示している。
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