2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞サイズのホメオスタシスの理論:細胞の成長と分裂の調整のしくみ
Project/Area Number |
06F06737
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PFEUTY Benjamin 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | システム生物学 / 力学系 / 細胞サイズ / 細胞分裂 / 安定性 / セルサイクル / 分岐 / ゆらぎ |
Research Abstract |
細胞のサイズがあまり大きくずれないのはなぜか、言い換えると、細胞サイズのホメオスタシスがいかにして可能かという問いをたて、力学系を用いて、その一般的なしくみを提唱した。細胞サイズが安定性を持つということは、分裂直後大きかった細胞は速く分裂し、小さかったものは分裂までに時間がかかることを意味する。そこで、細胞周期のダイナミクスとサイズの成長になんらかの結合が必要である。ここでは、細胞周期のダイナミクスをまず考え、そこに体積依存の項があることを要請した。さらに、体積増加とともにこの項が変化して、細胞周期ダイナミクスに分岐がおこることを仮定した。サドルノード分岐を示す場合に、サイズ成長によりある段階で分岐が起こり、それを経て分裂条件が満たされるというしくみによって、細胞サイズの安定性が一般的に導かれることを示した。さらに、環境が変わって成長速度が速くなっても、この安定性がある範囲で保たれることを示した。また、細胞周期のダイナミクスや細胞成長、そして分裂にノイズがある場合に、細胞サイズや分裂時間が細胞ごとにどのように分布するかを求め、それが実験結果を再現することを示した。また、上記で要請した力学系モデルの各項が実際の細胞のセルサイクルの反応でどのように実現されているか、実験結果をもとに予測を行った。これらの結果は沖縄およびヨーロッパなどの国際会議で発表し、細胞生物学の専門家と議論した。また実験家との議論を通して、モデルの整備を進めた。研究結果は、原稿にまとめ、現在、投稿のための最終チェックを行っている段階である。
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