2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞サイズのホメオスタシスの理論:細胞の成長と分裂の調整のしくみ
Project/Area Number |
06F06737
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 邦彦 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PFEUTY Benjamin 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | システム生物学 / 力学系 / 細胞サイズ / 細胞分裂 / 安定性 / セルサイクル / 分岐 / ゆらぎ |
Research Abstract |
細胞のサイズがあまり大きくずれないのはなぜか、言い換えると、細胞サイズはホメオスタシスがいかにして可能かという問いをたて、力学系を用いて、その一般的なしくみをまず提唱した。細胞周期のダイナミクスに体積依存の項を導入し、体積増加とともに、細胞周期ダイナミクスに固定解と振動解の間の分岐がおこることを仮定した。すると、サイズ成長によりある段階で分岐が起こり、それを経て分裂条件が満たされるというしくみがあらわれた。これにより大きい細胞は早く分裂するといった、細胞サイズの安定性機構が一般的に導かれた。また環境の変化やノイズに対する安定性も導かれ、細胞サイズや分裂時間の分泌が実験結果を再現することも示された。これらの結果は国際会議で発表し、Physical Biology誌に出版された。 一方、多細胞生物では増殖だけでなく、細胞が異なる状態へと分化したり、また細胞死(アポトーシス)を起こす。これらも細胞状態の分岐と考えられる。哺乳類のシグナル伝達系を用いて、そのエッセンスを抜き出した、9変数からなるモデルを構成した。このモデルは環境条件によって2種類の分岐が起こり、その組み合わせで2x2の状態が存在し、それらが、G0、G1、S-phase、apoptosisといった、細胞生物学で知られている細胞の基本的状態に対応することを、細胞内の各成分の状態の高低から示した。この分岐解析は、実験結果をみごとに説明し、また環境に対して柔軟に細胞分裂と分化を調整する機構があらわれることを示した。さらに力学系としてはこの振る舞いの本質が4変数の微分方程式で表されることも示した。この研究結果も国際会議で発表し、CellCycle誌に出版した。
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Research Products
(3 results)