2007 Fiscal Year Annual Research Report
キラル識別を指向したキラル結晶の合成と性質に関する研究
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06F06738
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西郷 和彦 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RIBEIRO Nigel Jose 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機結晶 / キラル結晶 / キラル識別 / 光学分割 / リン不斉 / ジアステレオマー塩法 / チオホスホン酸 / 環状エステル |
Research Abstract |
キラル有機結晶の生成過程におけるキラル識別は、結晶工学の観点から学術的に重要な課題であると同時に、光学活性物質の工業生産に直結する社会的ニーズの大きい分野である。にも関わらず、結晶成長と分子認識とが共存する複雑さのため、その機構には未だ不明な点が多い。本研究では、この学問領域に'官能基そのものがキラルな化合物'を取り上げ、その特異な構造(相互作用部位と不斉点との距離が汎用キラル化合物と比べて-原子分短い)を利用することにより、新規キラリティー識別系の創成とその機構解明を目指す。 上記概念の下でジアステレオマー塩法における新たな酸性分割剤を開発するにあたり、基本骨格としてO-アルキルアリールチオホスホン酸類(ArylP(=S)(OAIkyl)OH)を選んだ。昨年度の研究において、リン原子に直結するアリール基と酸素原子に隣接するアルキル基とを7員環構造で架橋したものを設計し、そのラセミ体の合成ルートを確立した、そこで本年度、光学活性チオホスホン酸の効率良い入手法を確立するために、種々の塩基性分割剤を用いたジアステレオマー塩法による光学分割を試みた。その結果、エリスロ-2-アミノ-1、2-ジフェニルエタノールを用いた場合に効率の良い分割が達成されることが分かった。続いて、得られた光学活性チオホスホン酸を酸性分割剤として用い、種々のラセミ体アミンのジアステレオマー塩法による分割を行なうことにより、そのキラル識別能の評価を行なった。分割対象としてラセミ体の2-アミノアルコール類を用いた場合、幅広い基質に対し極めて高い効率で分割が達成されることが明らかとなった。難溶性塩のX線結晶構造解析を行なった所、多くの場合2回らせん軸を持つ水素結合ネットワークが形成されていることが分かった。また興味深いことに、幾つかの塩においては、通常は得難い易溶性塩のX線結晶構造が得られ、結晶化過程におけるキラル識別機構を考察する上で新たな知見を得ることが出来た。
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Research Products
(1 results)