2006 Fiscal Year Annual Research Report
キラル識別を指向したキラル結晶の合成と性質に関する研究
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06F06738
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西郷 和彦 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RIBEIRO Nigel Jose 東京大学, 大学院工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機結晶 / キラル結晶 / キラル識別 / 光学分割 / リン不斉 / ホスホン酸 / チオホスホン酸 / 環状エステル |
Research Abstract |
キラル有機結晶の生成過程におけるキラル識別は,結晶工学の観点から学術的に重要な課題であると同時に,光学活性物質の工業生産に直結する社会的ニーズの大きい分野である.にも関わらず,結晶成長と分子認識とが共存する複雑さのため,その機構には未だ不明な点が多い.本研究では,この学間領域に‘官能基そのものがキラルな化合物'を取り上げ,その特異な構造(相互作用部位と不斉点との距離が汎用キラル化合物と比べて一原子分短い)を利用することにより,新規キラリティー識別系の創成とその機構解明を目指す. 研究の初期段階として,キラルリン(V)化合物の分子設計を行なった.結晶化過程において効果的なキラル識別を実現するには. (1)対象ラセミ体と強く相互作用する官能基を持つこと,(2)リン(V)原子上の4つの置換基の性質がそれぞれ互いに異なること,(3)キラル識別に有利な配座がプレオーガナイズされていること,(4)結晶性向上に有利な平面性置換基を持つこと を満たす必要がある.有機合成化学的見地から,O-アルキルアリールチオホスホン酸類(ArylP(=S)(OAlkyl)OH)を候補として選び,上記の要求に対し有利に働く設計として,リン原子に直結するアリール基と酸素原子に隣接するアルキル基とを架橋することを考案した.さらに非経験的分子軌道計算により架橋鎖の長さと分子構造との関連を検討し,リン原子を含む7または8員環構造の導入が最適であると結論した. 一般的な手法により,目的化合物の前駆体としてオルト位に1-ヒドロキシプロビル基を有するフェニルホスホン酸ジメチルエステルを得た.続いて,鍵反応である分子内エステル交換の条件を検討した.一般に分子内反応による7員環の構築は容易でなく,特殊な条件や反応試剤を必要とする場合が多いが,今回有機分子よりなる求核触媒を用いたところ,反応は温和な条件で極めて効率良く進行し,対応する7員環エステルを良収率で与えることを見いだした.
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