2007 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体を触媒とする新しい触媒的不斉合成反応の開発
Project/Area Number |
06F06794
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 民生 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SORGEL Sebastian 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 触媒的不斉合成 / ロジウム触媒 / キラルジエン配位子 / 共役付加 / 反応機構 |
Research Abstract |
医薬・農薬を始め新規有機材料に至るまで,その研究開発において光学活性体の役割は非常に大きく,様々な光学活性化合物を自在に合成し供給する方法の開発はきわめて重要である.ごく少量の不斉触媒から原理的に無限に光学活性化合物を供給できる触媒的不斉合成は,効率性に優れた手法である.従って,完成度の高い触媒的不斉合成反応の確立が,エネルギー・エコロジーの両面からも望ましい.このような実用上の利点および学術的な観点から,触媒的不斉合成に関する研究は過去30年間ほど活発に行われており,その知見は年々蓄積されてきているが,実用に適した反応例は意外に少なく,より信頼性・効率性に優れたプロセスの開発が求められている. SOERGEL君はまずキラルジエン配位子の高効率合成の開発に取り組んだ.キラルジエンは遷移金属錯体触媒不斉合成の新しい不斉配位子であるが,このキラルジエンを触媒的不斉合成により合成しようとするものである.残念ながらこの研究テーマは,いくつかの困難な反応行程を乗り越えることができず半年ほどで断念し,次にロジウム触媒不斉共役付加反応を生理活性化合物の合成に応用することを目的とするテーマへと移行した.幸い短行程で尿失禁治療薬として用いられているTolterodineの光学活性体を合成することに成功した.またこの全合成研究の中で,共役付加反応の基質としてアルキリデンシアノ酢酸エステルが反応活性や立体選択性の点で優れていることを見出した. これらの成果は,アメリカ化学会の有機化学の主要な専門誌の一つであるOrganic Lettersに一報の論文として掲載された.1年間以上にわたる実験結果の論文数としては一報のみというのは必ずしも多くはないが,手のかかる生理活性化合物の全合成が実験の中心であり,妥当なところである.
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Research Products
(1 results)