2007 Fiscal Year Annual Research Report
適応免疫誘導の為の自然免疫の解析;TLRシグナルと遺伝子発現におけるIRFの役割
Project/Area Number |
06F06804
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷口 維紹 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
COUZINET Arnaud 東京大学, 大学院・医学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | Fas / apoptosis / IRF |
Research Abstract |
IRFファミリー転写因子はウイルスなどの病原体感染における免疫系賦活化に重要な転写因子であり、中でもIRF5は病原体認識受容体であるToll-like receptor(TLR)刺激によって活性化され、IL-6などの炎症性サイトカインの誘導に重要な役割を果たす転写因子である。従来、IRF5はp53の誘導遺伝子であるとともに、DNA傷害により活性化し、Bcl-2の転写誘導に重要である事がin vitroの解析により報告されていることから、cell cycle arrestやアポトーシスとの関連が示唆されていたものの、生理的な状況下におけるIRF5の役割りは上記の炎症性サイトカイン産生以外には不明であった。しかしながら最近の報告でIRF5はウイルス感染時のIFN産生、アポトーシス誘導に重要な役割を果たす事が報告され、病原体に対する免疫応答の多岐にわたって重要な役割を果たす転写因子であることが分かりつつある。しかしながら、そのようなウイルス感染時におけるIRF5によるアポトーシス誘導の分子メカニズムや免疫応答における役割は依然として不明であった。本研究によりIRF5はFasによって誘導されるアポトーシスに重要な役割を果たす事がマウス個体および細胞レベルで明らかにされた。すなわちIRF5欠損マウスはFasリガンド投与によるショック死に耐性を示し、肝臓の傷害も顕著に減弱された。IRF5はその下流で様々な遺伝子を誘導する事でFasによるアポトーシスを起こしやすいように細胞の状態をコントロールし、特定の細胞を選択的に死に至らしめることが明らかとなった。このような機構は、一度活性化した免疫系細胞中で同様に活性化状態にあるIRF5が、自己細胞を死にやすくすることで免疫応答を収束させることに関わるものと思われる。これら一連の検討はPNAS誌に論文として投稿し、すでに受理されている。ヒト全身性エリトマトーデス(SLE)患者においてもIRF5遺伝子に一塩基変異多型(SNP)が報告されていることから今後、過剰な免疫応答や自己免疫におけるIRF5の生物学的な意義をさらに検討して行く予定である。また、他のIRFファミリー転写因子群についても検討を加えることを予定している。
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