2008 Fiscal Year Annual Research Report
自由の条件と排除のダイナミクス-共生社会の秩序を考察する実践的理論枠組み
Project/Area Number |
06J00131
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
内藤 準 Gakushuin University, 法学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 自由 / 責任 / 不平等・格差 / 主観的福祉 / リベラリズム / 社会秩序 / 資源分配 / 社会階層 |
Research Abstract |
本研究の目的は、自由と責任の制度的な意味と、人々に実質的な自由を与える社会的条件を明らかにし、その分配や政治的・経済的効果を考察することである。本年度は、全国標本調査データの分析を進め、今日の貧困や格差問題の文脈における自由と責任のルールの意味を考察し、報告をおこなった。 1.社会学の階層研究・階層意識研究の重要な論点に、資源分配の男女差が、生活満足度や階層帰属意識の差にならないのはなぜか、という問題がある。本研究ではこの問題との関連で「自由感」指標を用いたデータ分析をおこない、以下を明らかにした。(1)個人収入・教育・健康という個人的資源は、男女問わず、自由感を高める。(2)家族関係が個人の自由感に及ぼす影響は男女間で違いがある。総じて、婚姻に伴う家事・出産・育児が女性にのみ負担となることが示唆される。(3)他方、生活満足度や階層帰属意識は、世帯収入の影響を強く受ける。(4)結果、自由感には、生活満足などと違い、個人的資源の分布のとおり男性の方が女性より高くなる傾向が見られる。以上から、生活満足度や階層帰属意識に男女差が出ないのはそれらが主に世帯単位の資源で決まるからであること、また個人単位の資源で決まる自由感は階層意識研究における「主観的福祉」への新たな分析視角たりうることが明らかになった。 2.「自由と責任」の社会規範がもつ意味を、貧困問題や失業などの具体的文脈に引きつけて明らかにした。行為者の自由をその行為や結果への責任と結びつける社会規範は、円滑で安定した社会の基礎である。他方、今日の社会ではこの規範のうち、個人の経済的困窮などの責任はその人自身が負うべきだとする側面が強調されがちである。しかし、自由と責任の規範を適用するには、「行為者が十分に実質的に自由だ」という前提があり、その前提を無視した一面的な白己責任論は、むしろ安定した社会の基礎か掘り崩す恐れがある。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article]2009
Author(s)
内藤準, ほか, 武川正吾, 白波瀬佐和子, 編
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Journal Title
『福祉と公平感--格差社会における社会意識』(仮題・近刊)「第7章 自由を規定する要因」(東京大学出版会(未定))
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