2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J00270
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山嵜 敦子 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 進化発生生物学 / 初期発生 / 転写因子 |
Research Abstract |
ウニ16細胞期胚の植物極に形成される小割球は、発生において2つの重要な役割を担っている。小割球は、細胞自律的に骨片形成細胞へと分化するだけでなく、内胚葉と二次間充織細胞(SMC)を誘導する形成中心としてはたらく。小割球の特異化には、micro1が中心的な役割をしている。micro1は新規のホメオボックス遺伝子で、小割球とその子孫細胞で一過的に発現し、植物構造に必須な核β-cateninの標的遺伝子であることがわかっている。機能解析の結果、micro1は小割球の細胞自律的な分化と内胚葉誘導に「必要かつ十分」であるが、SMC誘導能には「必要だが十分ではない」ことを以前の研究で明らかにした。この結果は、micro1だけでは小割球のSMC誘導能を説明できないことを示しており、小割球の誘導能にはmicro1に加えて別の因子も関わっていることを示唆している。私たちはその候補として、小割球での核β-cateninのもうひとつの標的であるKruppel-like(Krl)遺伝子に注目した。Krlは、ジンクフィンガーモチーフを持つ転写抑制因子をコードしている。その発現は小割球ではじまり、発生とともに大割球子孫細胞へと移行する。本研究では、「micro1とKrlの共発現が小割球を特異化する」という仮説を実証することを目的とし、Krlの機能解析を行った。Krlノックダウン胚の表現型解析から、KrlはSMC形成に必要であることが示された。次にノックダウン胚を用いたキメラ胚作製実験を行い、小割球と大割球子孫細胞での機能を区別して解析した。その結果、Krlは小割球の誘導能よりもむしろ、大割球において小割球からの誘導シグナルを受けてSMCを形成することに関わっていることが明らかになった。また、過剰発現実験によって、Krl発現は外胚葉から内中胚葉を形成するのに十分であることが明らかになった。これらの結果を9月にDevelopmental Biology of the sea urchinにて発表した。
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