2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国古代貨幣史の研究-中国古代の「貨幣」に関する経済人類学的研究-
Project/Area Number |
06J00496
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柿沼 陽平 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中国古代 / 殷周 / 秦漢 / 宝貝 / 貨幣 / 銭 / 貨幣経済 / 半両銭 |
Research Abstract |
本年度は、2006年4月以来の日本学術振興会特別研究員(DC1)として報告者が研究してきた内容を一挙に発表した。まず戦国秦漢時代における貨幣経済の展開過程とその構造的特質について、「秦漢帝国による「半兩」銭の管理」・「前漢初期における盗鋳銭と盗鋳組織」・「戦国秦漢時代における布帛の流通と生産」の三本の論文にまとめた。それによると、戦国秦漢時代には銭・黄金・布帛を中心とする多元的貨幣経済が営まれており、その中で複数の貨幣がそれぞれの社会的文脈に沿ってさまざまな社会的機能を果たしていた。機能面のみを挙げれば、銭も布帛も黄金も経済的流通手段としての役割を果たしていたといえるけれども、それらにはそれぞれ異なる社会的機能・社会的制約があり、全く異なる存在意義を有していたわけである。そしてその中で、人々はそれらの貨幣を求め、それらを用いて生活し、それらに振り回されながら人生を送っていた。またその一方で、それゆえに国家はその利益を独占する政策を次々に打ち出していった。上記の諸論考においては、そのような戦国秦漢時代における国家と民のおりなす多元的な貨幣経済の実態を究明することを試みた次第である。また2009年1月には、上記の成果の一部を韓国の成均館大学において報告した。「戦国秦漢貨幣経済の特質とその時代的変化」がそれである。 つづいて報告者は、中国古代貨幣経済そのものの起源にも言及した。その結果、殷周時代においては宝貝が殷系人を中心に営まれた贈与交換の媒体物であったが、その文化が殷系人の各地への分散化とともに各地に広がり、その後、戦国秦漢貨幣経済の成長とともに、そのような貨幣経済の中で生活する人びとに「貨幣の始原」をしめずものと誤解され、そのような「記憶」が形成されたと論じた。これは論文「殷周時代における宝貝文化とその「記憶」」として発表した。
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