2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J00510
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中里 健一郎 Waseda University, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 初代星 / 重力崩壊 / ニュートリノ / ブラックホール / 高温・高密度状態方程式 |
Research Abstract |
宇宙で最初に出来た初代星の研究は、化学進化など宇宙の歴史を理解する上で重要である。これらの星には、太陽の1000倍程度の質量のものもあったとされており、特に10太陽質量を超える星については、進化の最後に重力崩壊を起こして超新星かブラックホールになると考えられている。一方、ブラックホールが形成される揚合、パイ粒子の凝縮やクォークの解放(QCD相転移)が起こるような高温・高密度領域を通過する可能性があるが、そういった現象をきちんと考慮したブラックホール形成の研究はこれまでなされてこなかった。 そこで、今回はパイ粒子凝縮とQCD相転移まで考慮した状態方程式を作成し、それを用いてブラックホールを形成する大質量初代星の重力崩壊を計算した。その結果、100太陽質量の星ではパイ粒子凝縮・QCD相転移により状態方程式がやわらかくなるため、重力崩壊が加速しブラックホール形成までの時間が早まることが分かった。このことは、崩壊と同時に放出されるニュートリノの観点から言うと、ニュートリノの放出時間が短くなることを意味しており、総放出量も2割程度減少することが分かった。一方、300太陽質量以上のより重い星では違いがあまりみられなかった。この原因はダイナミクスにある。100太陽質量の星ではブラックホールが形成される前に、高温で原子核が融けて生成された核子の熱的圧力で重力崩壊が跳ね返されるため、ブラックホール形成までに時間がかかり状態方程式による違いが顕著になる。一方、300太陽質量以上のより重い星では跳ね返ることなく即座にブラックホールができるため違いが出にくい。 初代星は非常に遠方にあるため、こういった性質の観測的実証は難しいが、今回の成果はハイパーノバやガンマ線バーストといったブラックホール形成を伴うとされる現象全般の研究にも一石を投じるものであると考える。
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