2008 Fiscal Year Annual Research Report
多文化国家オーストラリアのマルチリテラシーの模索:多様性の涵養を目指した教育実践
Project/Area Number |
06J00643
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
青木 麻衣子 Bukkyo University, 教育学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | リテラシー教育 / 多文化社会の教育 / マルチリテラシー / 多様性 / オーストラリアの教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は、オーストラリアにおける英語の位置づけとその教育の必要性を、一般にマイノリティといわれる先住民を対象としたリテラシー教育の政策・実践をもとに再考し、それにより「統一的」な教育目標を設定する現代の国内外の傾向に疑問を呈するとともに、教育における多様性涵養の可能性を模索することである。調査・分析に際しては、多様な観点からの物事の把握を目指す「マルチリテラシー」の考えを援用した。 本年度は、一昨年度から引き続き、オーストラリアで近年進められている教育制度・内容の統一に向けた動きについて、特に、これまでの州作成テストに変わって2008年度から実施されている全国共通学力調査に注目し、その意義と影響とを分析・考察した。また、同国クイーンズランド州の、特に先住民を対象とした学力向上政策に焦点を当て、全国学力調査の推進が、先住民コミュニティの学校教育に与えている影響を調査・考察した。特に教員施策に焦点を当て、1980年代後半以降、同州がジェームズクック大学等の高等教育機関と協働で行ってきた先住民に対する遠隔地教員養成制度(RATEP)について調査した。また、調査の一環として行った教員へのインタビューで感じた「教育」観・「学校」観の変容を追究すべく、教育政策・報告書及び同地の主要紙『トレスニュース』の記事分析も行った。その結果、1980年代に先住民の言語・文化を脅かす存在とみなされた「学校」が、少なくとも言説上は、2000年以降は主としてそれらを積極的に守る存在へと転化されつつあることを明らかにした。
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Research Products
(11 results)